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大崎事件 再審認めぬ絶望が今も

2022年6月24日 05時05分 (6月24日 05時05分更新)
 鹿児島県大崎町で一九七九年に男性の遺体が見つかった大崎事件で、鹿児島地裁は殺人罪などで服役した原口アヤ子さんに再審開始を認めなかった=写真。殺人事件かも疑わしいのに「再審の扉」さえ開かぬ判断は嘆かわしい。
 警察は当初から殺人と断定して捜査した。原口さんら親族が共謀して男性をタオルで絞殺、牛小屋の堆肥に埋めた、と。四人が逮捕され、八一年に最高裁で有罪が確定。一貫して無実を訴えた原口さんは懲役十年とされ服役した。
 出所後の二〇〇二年に地裁が再審開始を認めたが、〇四年に高裁支部が取り消した。後に地裁と高裁が再審を認めたものの、一九年に最高裁が取り消すという異例の経緯をたどった。
 弁護側は捜査側とは全く異なる展開を描いた。事件当日、男性は酒に酔い、自転車から道路脇の深さ一メートルの溝に転落。道路に横たわっているところを同じ集落の住人二人が発見し、小型トラックの荷台に乗せて自宅まで運んだ。その時点で既に男性は死んでいた、という救命救急医による新しい鑑定に基づく主張だった。
 確定判決の犯行時刻は午後十一時ごろだが、弁護側は「午後九時ごろには既に死亡していた」と指摘し、殺人事件とするのは「医学的にあり得ない」と主張した。
 しかし、鹿児島地裁は新鑑定を「否定はできない」としつつも、「確定判決に合理的疑いを生じさせるとは言えない」と退けた。
 共犯とされた親族の「自白」は捜査側が描く筋書きの根幹だが、変遷があり、警察の取り調べに迎合した可能性がある。もっと新旧証拠を再検討すべきだった。元裁判官十人が抗議声明を出すほど、説得力に欠けた決定だった。
 原口さんを犯人とする直接証拠はなく「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則にも反する。「殺人」の認定にも科学的な疑義が生じている以上、もはや無実と判定すべきではないか。
 原口さんはすでに九十五歳という高齢であり、再審の扉を早く開く必要がある。検察はその場で反論してもよいはずだ。司法が再審をためらってはならない。

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