“行かないふり”で二塁に投げさせる…ヤクルト山田が併殺に入った瞬間トップギアで本塁へ 中日・高松の神走塁
2022年6月22日 10時36分
◇渋谷真コラム・龍の背に乗って ◇21日 中日2x―1ヤクルト(延長10回サヨナラ、バンテリンドームナゴヤ)
歓喜のサヨナラで貯金3。間違えているのではない。首位独走のヤクルトに、11球団で唯一勝ち越しているのが中日だ。ビジターでは圧倒的に強いヤクルト(25勝8敗1分け)に、ミラクルエイトで追いつき、延長で仕留めた。
決着がついた10回の攻防。同じ2死二塁で、それぞれの投手コーチがマウンドに向かった。打ち合わせたのは「どちらで勝負するか」。中日はオスナを、ヤクルトは木下を申告敬遠して一塁を埋めた。明暗が分かれたのはその先だ。ロドリゲスは長岡を二ゴロに抑えたが、溝脇は右前打を打った。満塁で今野から田口に継投。すかさず京田に代打・三ツ俣。どちらも説得力のある用兵だった。
高津監督が田口を「切り札」と呼ぶには理由がある。一番は満塁での強さ。今季6打数無安打3三振、1併殺と無双だった。5月24日の日本ハム戦(神宮)では、延長10回無死満塁で同じく今野を救援し、三振、遊直、三振で窮地を脱し、チームにサヨナラ勝ちをもたらした。左打者も被打率1割2分1厘(33打数4安打)と圧倒。一方、三ツ俣は3割6分8厘(19打数7安打)の左キラー。互いに手は尽くしたが、一瞬の勝機を逃さなかった立浪監督に勝利の女神はほほ笑んだ。
表のヒーローが三ツ俣なら、陰のヒーローは代走・高松だ。8回無死一、三塁。代打・溝脇の二ゴロ併殺打の間に、同点のホームを踏んだ。この局面、ヤクルト内野陣は少し複雑なポジショニングを敷いていた。ショートだけが併殺シフト。残り3人はそれより前に守っていた。それを見た上で、中日ベンチから高松への指示は「ショートゴロのみ本塁へ突入せよ」だった。つまり二ゴロは本来なら自重。だが、高松は山田が二塁に投げた瞬間、トップギアでスタートした。
彼は行かないと見せ掛け、山田に投げさせたのだ。ベンチの指示を超越する神走塁。おとなしく自重していたら、同点はなかった。溝脇、高松、三ツ俣。途中出場した男たちが運んできた勝利だった。
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