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【リンパ浮腫を考える】(上)オンライン患者会 少ない情報分かち合う      

2022年6月21日 05時05分 (6月21日 15時22分更新)
 がんの手術でリンパ節を取り除くなどした後に腕や脚が大きくむくむリンパ浮腫。リンパ管の流れが悪くなるのが原因だ。治療には、リンパの流れを整えるマッサージ「ドレナージ」や弾性着衣を身につけてリンパ液がたまるのを防ぐ圧迫療法、リンパ管から静脈へのバイパスをつくる手術などがある。ただ「相談先が分からない」と悩む人は多く、オンラインでの患者会活動が広がり始めている。 (編集委員・安藤明夫)

がん患者のイベントで、リンパ浮腫治療の課題を訴える加藤めぐみさん=11日、東京都内で


体験談が聞けない


 愛知県みよし市の加藤めぐみさん(60)が、リンパ浮腫を発症したのは2015年。右胸の乳がんで2度目の抗がん剤治療を受けた直後だ。ブラウスの袖を通らないほどに右腕がむくみ、外出時は周囲の目がつらかった。右の背中も腫れて眠れない日が続いたため、乳腺外科の主治医と相談。形成外科医のもとで、流れが滞ったリンパ管を静脈につなぎ直すリンパ管静脈吻合術(ふんごうじゅつ)(LVA)を受けたところ、軽快した。
 実感したのは、リンパ浮腫を巡る治療態勢や情報の乏しさだ。例えば、手でさすって滞留した老廃物などを流すドレナージは、民間資格「医療リンパドレナージセラピスト」を持った看護師らが担う。しかし、それとストッキング、スリーブといった医療用の弾性着衣、肌の保湿などを合わせた「複合的治療」が公的医療保険の対象になったのは16年度から。一定の要件を満たした医療機関に診療報酬の加算がついたが「金額が低く、取り組む病院はほとんどなかった」。またLVAはリンパ管と細い血管をつなぐ高度な技術が必要なため、できる外科医が少ない。受けた人の体験談を聞きたくても見つからなかった。

愛知から発信1年


 リンパ浮腫の患者は大半が女性。乳がんや子宮がんなどを機に、リンパ節を切除したり、放射線治療をしたりした部分からむくみが広がるのが特徴だ。患者数は定かではないが、治療を諦めてしまっている人も多いとみられる。
 「命に直接影響しないとして軽視される。早期治療やケアを受ければ慢性化や重症化を防げるのに」と加藤さんは悔しがる。東京では19年、全国規模の患者団体も生まれたが「地方はまだまだ」。そこで昨年7月、自身が主宰する乳がんのオンラインサロン「“&”(あんど)」に、リンパ浮腫カフェを開設した。
 ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」を使っての開催は3カ月に1度ほど。毎回、全国から6人前後が参加し、体験談や情報を交換している。
 卵巣がんを機に、両脚と腹部にリンパ浮腫を発症した愛知県の女性(56)は、初期治療が遅れたことを悔やむ。むくみがなかなか引かず「両脚用の弾性ストッキングをはくのに最初は30分以上も。4年たった今でも10分はかかります」。
 リンパ浮腫の人が併発しやすいのが、傷口からの細菌感染による皮膚の病気、蜂窩織炎(ほうかしきえん)。宮崎県の女性(53)は乳がん発症から8年後に腕が腫れ、整形外科でマッサージを受けた。しかし、患部の写真をインターネットの患者グループに見せると、専門医から「蜂窩織炎かもしれないからマッサージはよくない」と助言された。抗菌薬などによる治療を受け数カ月で完治したが「情報不足の怖さを痛感した」。参加者の中には男性もいる。前立腺がんを患い、蜂窩織炎に2度なったという石川県の患者(59)は「体験者の声が聞きたかった」と話す。
 次回のカフェは26日午後1時半〜3時。申し込みは電子メール=smil2021-ando@yahoo.co.jp=で。
 ◇ 
 次回は28日付。リンパ浮腫の予防や治療に取り組む医療関係者の奮闘に迫ります。

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