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今、すごく陸上が楽しい 福井国体で挫折失った闘志に火

2022年6月21日 05時05分 (6月22日 14時46分更新)
女子100メートル障害で今季調子を上げている野村=いずれも福井市の9・98スタジアムで(提供写真)

女子100メートル障害で今季調子を上げている野村=いずれも福井市の9・98スタジアムで(提供写真)

  • 女子100メートル障害で今季調子を上げている野村=いずれも福井市の9・98スタジアムで(提供写真)
  • 5月の県選手権で準優勝した野村(右)

今季好タイム ハードル野村有香


 今季、どん底からはい上がったハードラーがいる。陸上女子100メートル障害で数々の実績を残し、400メートル障害の県記録保持者でもある野村有香(現姓・斉藤)。有終の舞台と定めたものの、予選落ちした福井国体から四年。一時は競技を遠ざけたが、過去の自分に打ち勝ち、真価を証明している。 (谷出知謙)
 十二日まで大阪で行われた日本選手権。100メートル障害予選のレースに野村の姿があった。妊娠、出産を経て三年ぶりに挑む大舞台は13秒55で予選敗退。それでも、真剣勝負を懸けた緊張感が心地よかった。「悔しいと思えて。選手としての第一歩を踏めました」
 あの負けが、脳裏にこびり付いている。二〇一八年十月五日、陸上の県選手団主将として臨んだ地元国体。成年女子400メートル障害で予選4着となり、決勝進出を逃した。「人生で一番練習したのに」。心と体を追い込んだ日々は報われなかった。
 もう一年だけ、と臨んだ翌年のシーズンも苦戦。故障を抱えたまま日本選手権に挑み、予選で散った。「負けたのに悔しくなくて。いろんな意味で終わったと思った」。競技から離れた後に妊娠が分かった。母としての人生が始まろうとしていた。
 家事に追われる中、ふとした瞬間にフラッシュバックが襲う。自分の前を走る選手の背中に、ゴール後に目にした光景。「福井国体を毎日鮮明に思い出して、どよーんってなるんです」。出産を直前に控えた二〇年三月、光が差した。東京五輪出場を懸けた名古屋ウィメンズマラソンで、悪天候の中好タイムで優勝した一山麻緒の走りを見た。「感動した。陸上を楽しい思い出に変えたい」。失っていた闘志に火がついた。
 かつての身体からは程遠い出産三カ月後からトレーニングを始め、一冬越えた二一年五月、産後初戦となる県記録会は14秒7で準優勝。V字曲線を描くも、高校生に負けた事実が悔しさをかき立てた。夫と相談した上で練習頻度を増やし、質も重視。「昔の私に勝てるのは知識と経験だけだから」。柔軟性を高め、オフは課題だった後半の失速を抑えようと練習を積んだ。
 功を奏した。四月の県記録会で13秒85台を出し、五月には13秒55の好タイムを記録。国内最高峰の大会への出場権を手にしただけでなく、かけがえのない副産物があった。「フラッシュバックがなくなったんです。今はすごく陸上が楽しい」。今後は布勢スプリント(二十五、二十六日・鳥取)に全日本実業団(九月・岐阜)とトップ選手が集う大会に出場予定。「主人も私もここまでこれると思わなかった。体が動く限りやっていきたい」。そんな言葉に心身の充実具合が伝わってくる。
 のむら・ゆか 越前市出身。小学校4年から陸上を始め、敦賀高3年時に女子100メートル障害でインターハイ準優勝、400メートル障害で国体準優勝。筑波大を経て、卒業後は敦賀市内で二年間社会人選手となり、2010年に400メートル障害で56秒96の県記録を樹立。その後北海道ハイテクACに所属し、2018年の福井国体に向けて故郷に戻った。100メートル障害の自己ベストは13秒21。35歳。 

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