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<Meet STEAM> 研究成果を発信する「科学広報」 名古屋大素粒子宇宙起源研究所 広報室研究員 南崎梓さん

2022年6月20日 12時56分 (6月20日 13時40分更新)
 はるか昔、宇宙はどのように誕生したのか。そんな大きな謎を解き明かそうと、世界中から科学者が集まる名古屋大素粒子宇宙起源研究所(KMI、名古屋市千種区)。その研究成果を一般の人にも分かるように発信する広報室の研究員、南崎梓さん(40)に、科学と社会をつなぐ「科学広報」の意義や魅力を聞きました。(聞き手・白井春菜)

 みなみざき・あずさ 1981年、北海道生まれ。お茶の水女子大大学院修了、博士(理学)。東大本部広報室、米カリフォルニア工科大の天文学研究部門での科学広報などを経て2018年から現職。KMIは研究所の英語表記「Kobayashi―Maskawa Institute for the Origin of Particles and the Universe」の略。2月に長男を出産し、9月末まで育休中。


 ―KMIについて教えてください。


 宇宙が生まれ、ブラックホールや銀河などができる前に何が起きたかを研究しています。科学者をつなぐハブ組織で、メンバーは客員研究員も含め五十人以上。宇宙観測、宇宙の始まりの状況を作り出す素粒子実験、コンピューターや黒板があればできる理論研究といった方法で、宇宙の起源に迫ろうとしています。K、Mはノーベル物理学賞を受賞した、名大特別教授の小林誠さんと故益川敏英さんの名前から。二人が一九七三年に発表した小林・益川理論は素粒子物理の重要な考え方です。

宇宙の歴史を図で示したKMIのパンフレット(手前)や、物理学の現象を「不思議の国のアリス」の世界観で表したポストカード(左上)など、手がけた広報資料=名古屋市千種区で

 ―科学広報の仕事とは。


 科学の話を専門でない人も理解できるよう伝えることです。例えば小林・益川理論が説明した、鏡に映したように同じはずの粒子と反粒子が違う動きをする不思議な現象「CP対称性の破れ」を、「不思議の国のアリス」のウサギが鏡の中で違う動きをするイラストをあしらったポストカードに仕立てました。物理に関心のなかったデザイナーに説明し、「物理って面白い」と感じてもらいながら一緒に作るのはワクワクしました。
 科学への信頼を築くためにできるだけ情報を出すことを心掛けています。

 ―昔から理数系科目が好きだった?


 算数は苦手。動物や宇宙などの図鑑、特に「モモ」の作者、ドイツの児童文学者ミヒャエル・エンデの作品をよく読みました。小学生の時はエンデが案内人を務める、アインシュタインの相対性理論を解説するテレビ番組に夢中でした。宇宙にも興味があり、工学部を受験しようと思っていた高校三年の冬。エンデの番組をふと思い出し、「四年間かけて物理を学ぼう」と理学部に進みました。

 ―研究者から広報に。


 博士論文で一区切りついた気がして。科学の面白さを多くの人に伝えたいと思うように。当時、科学広報は一般的ではなく、二〇一〇年から三年、東京大本部で大学広報として働きました。結婚し、観測的宇宙論の研究をしている夫の仕事の都合で一三年に渡米。科学広報として働きたい熱意を伝え、カリフォルニア工科大に所属して米航空宇宙局(NASA)の宇宙望遠鏡の情報発信をする職にたどり着きました。
 子どもや一般の人と直接話す機会は研究者の意欲につながります。科学者が信頼を得られれば、自由に研究させてもらえ、そうやってどんどん新しい成果が生まれ、みんなが楽しみにしてくれる―。そんな国にしたいと願っています。

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