本文へ移動

AKI INOMATAさん 個展「Acting Shells」

2022年6月11日 05時05分 (6月11日 11時01分更新)

真珠貝と各国通貨のシンボルになっている人物の肖像を組み合わせた作品「貨幣の記憶」の1点=金沢21世紀美術館で(撮影:木奥惠三)

▽金沢21美「アペルト」
 “貝から見える人間社会”

 生き物と人間の関係に着目した作品を国内外で数多く発表しているアーティストのAKI INOMATAさんの個展「Acting Shells」が、金沢21世紀美術館で開かれている。貝の生態や行動から発想された作品は、移民、国家、貨幣といった人間社会の有りようを考えさせる。(松岡等)
 生きたヤドカリを水槽で飼う作品「やどかりに『やど』をわたしてみる」は進行形の作品。3Dプリンターで出力した世界各地の都市を模して制作された透明な樹脂製の「やど」が入れられている。ヤドカリは、その生態から「やど」の引っ越しを繰り返す。

AKI INOMATAさん(Photo by Eisuke Asaoka)

 「宿から宿へ移り住むのは、私たちが移住することにも通じる。引っ越して背負う宿が変わることで見立てもずいぶん変化するが、まるでアイデンティティーまでが変わってしまうようにも見える。それは人間社会にも通じるのではないか」と意図を説明する。
 今回の展示の「やど」は、ニューヨーク、ギリシャのサントリーニ、エクアドルのグアヤキル。移民問題との関わりも想起させる。
 一方、貝殻を貨幣として使ってきた歴史を考える作品が「貨幣の記憶」。真珠貝に、福沢諭吉、毛沢東、ワシントン、エリザベス女王、カール・マルクスら通貨に使われた人物像を核として埋め込んで育てて、貝から肖像を浮かび上がらせる。同時に貝殻が海底にひらひらと沈んでいく様子を映し出した映像も展示。漂うように沈んでいく貝の映像は、貨幣が長い期間をかけ化石となっていくことを想像させる。

世界各地の都市をかたどった「やど」に住んでもらうコンセプトの作品「やどかりに『やど』をわたしてみる」=金沢21世紀美術館で

 実際、映像を撮影した種子島にある弥生から古墳時代の広田遺跡からは、幾何学模様がほどこされた貝の装身具が数多く出土。それらは、考古学や文化人類学の知見から、呪術性や歴史や物語を記憶する象徴性を持つ原始的な貨幣だった可能性があるのだという。
 このほか「Lines−貝の成長線を聴く」は、貝殻の断面を切り取ることで表れる年輪のような成長線を、福島県相馬市で東日本大震災直後の二〇一一年と一五年に採集したアサリで比較した作品。成長線を顕微鏡で拡大した写真からは、津波のダメージや護岸工事のストレスが象徴的に浮かび上がる。また、これをレコードの溝にして変換した音を聞く試みも行っている。
 さらにイカやタコの近縁種であると言われるアンモナイトの殻の形を復元し、そこにタコを出会わせた様子を映した映像作品「進化への考察#1:菊石(アンモナイト)」は、生物の進化に思いをはせる思考実験のようでもある。
 INOMATAさんは、一九八三年生まれ。東京芸術大大学院先端芸術表現専攻修了。動物園との協力でビーバーが削った角材を彫刻に見立てたり、飼い犬の毛を集めて作った服と自身の毛による服を交換して着てみせる作品など、一貫して生き物と人との関係を作品として提示している。
 若手作家を紹介する21美の「アペルト」シリーズの一環。会期は九月十一日まで。

関連キーワード

おすすめ情報

北陸文化の新着

記事一覧