トレラン160キロ「非現実」撮る 金沢の写真家が完走
2022年6月6日 05時05分 (6月6日 10時27分更新)
▽カメラ放さず「世界観 魅力伝えたい」
四月に開かれた国内最大級のトレイルランニングレース「ウルトラトレイル・マウントフジ(UTMF)」で、金沢市の写真家、三井伸太郎さん(45)がカメラを手に取材をしながら完走した。舞台は総距離約百六十キロ、累積の標高差約六千四百メートルにおよぶ富士山麓一帯。選手目線で写真を撮り、競技の魅力を伝えている。 (村松秀規)
日差しが照りつけ、車酔いのような気持ち悪さが襲う。雄大な富士山を望みつつ、これから越えて行く山を見ると、足は重い。「カメラを投げ捨ててやろう」。そんな衝動に駆られた瞬間もあったと振り返る。
富山県砺波市出身。楽器メーカーに勤め、撮影は副業だった。趣味のランニングの延長でトレランを始めたのが三十代後半。知人のつながりからレース写真なども任されるようになり、本業の収入を上回ったため二〇一八年に独立した。
トレランの魅力は「非現実さと達成感」と語る。山中温泉トレイルレース(石川県、約八十キロ)やオンタケ100(長野県、約百キロ)などのウルトラトレイルを完走した実績もある。しかし、UTMFはそれらを上回る約百六十キロ。自身最長距離への挑戦だった。雑誌の出版社から選手目線での撮影や携行するコンパクトデジタルカメラの特集を任され、スタートした。
黙々と進む選手たち、ランナーがぐったりと横たわる仮眠所の光景。レースのリアルを撮ることを主眼にカメラを構えた。山々を越えていく人たちの非現実的な世界観を世に伝えたい。「途中でやめることは頭になかった」と語る。
スタートから四十時間。二日目の朝を迎え、ゴールテープを切った。達成感と安堵(あんど)感に包まれ「つらさが全て吹き飛んだ」。
取材内容は五月発売の雑誌「ランプラストレイル」に掲載された。三井さんは「今後は海外のレースにも行きたい。撮影も自分自身のレースも含め幅を広げていきたい」と意気込んでいる。
【メモ】ウルトラトレイル・マウントフジ 4月22〜24日に3年ぶりに開催。男女1808人が出場した。静岡県の富士山こどもの国から富士山麓一帯を巡り、山梨県の富士急ハイランドがゴール。2022年の総合優勝者のタイムは18時間15分だった。国内にはトランスジャパンアルプスレース(約415キロ)、滋賀一周ラウンドトレイル(438キロ)などの長距離レースもある。
関連キーワード
おすすめ情報