3年ぶり、新緑の奥越を快走 越前大野名水マラソン
2022年5月23日 05時06分 (5月23日 16時07分更新)
新緑の奥越路を駆け抜ける第五十八回越前大野名水マラソン(大野市、市教委、市スポーツ協会、中日新聞社、日刊県民福井主催・市陸上競技協会主管)が二十二日、市役所を発着点にしたコースで開かれた。三年ぶりに市内のコースを走った県民対象の第一部「県民マラソン大会」では、四種目二十一部門で千百十九人が完走した。
10キロ一般男子四十歳代の後久真嗣さん(福井市)、同一般女子四十歳以上の吉川マユミさん(同)、3キロ一般女子の河合美奈子さん(敦賀市)が大会新記録をマーク。3キロ一般男子の前田倖誠さん(福井市)は大会タイ記録だった。
コロナ対策で開会式は行わず、レース前に放送を使って長谷部祐円大会長が「練習で培った努力と技量で安全に走り抜けることを期待している」と激励。総裁の石山志保市長は「ゴールした後には大野のおいしい水を味わってほしい。記憶に残るいい大会になるよう頑張ってほしい」と参加者を歓迎した。
ランナーは部門ごとに次々とスタート。カラフルなユニホーム姿でコースに広がって駆け抜ける久しぶりの光景が広がった。レース後の表彰式は行わず、各部門6位までの入賞者に後日、賞状と副賞を贈る。
今回はコロナ対策で規模を縮小し、人気のハーフマラソンは実施しなかった。居住地に関係なく好きなルートを走る第二部「オンラインマラソン大会」もこの日始まり、六月五日までに設定した距離を走る。第二部には三種目四部門に五百四人がエントリーしている。 (山内道朗)
3年前のリベンジ 10キロ男子・笠川康平さん
三年前に誓った「リベンジ」を果たしてみせた。10キロ一般男子三十九歳以下は勝山市滝波町三、不動産業で県社労士会にも所属する笠川康平さん(35)が優勝。「目標タイムには届かなかったが、満足です」と納得のレースだった。
二〇一九年の大会は県外参加者も交えたハーフマラソン男子三十九歳以下で、県勢トップながら準優勝。雪辱を誓ったが、コロナ禍で二年連続、その機会は訪れなかった。ただ「仲間とともに練習を続け、モチベーションは維持できた」。
この日は、県営陸上競技場などで一緒に練習に励む仲間と上位を争った。「気温の高さと向かい風がきつかった」と目標の31分台には届かなかったが、2位とは1分30秒差。安定の走りで抜け出し、最後までリードを守った。
ゴールでは妻の優花さん(32)と、二月に生まれた長男嘉人ちゃんが出迎えた。「生まれたばかりの子どもに、いいところを見せられた。それが一番うれしい」。家族の力強い後押しを受け、走りに磨きがかかった。 (玉田能成)
練習の成果を発揮 10キロ女子・吉川マユミさん
10キロ一般女子のトップでゴールに飛び込んだのは福井市高木町の助産師、吉川マユミさん(44)。同市や敦賀市を拠点に活動する社会人チーム「nrc」に所属する。三十九歳以下の部の選手を抑え「一番を狙って練習していたのでうれしい」と笑顔を見せた。
大野市出身。進学や結婚で地元を離れ、子どもの学校行事と重なってしまうこともあって、名水マラソンにはここ十年以上出場していなかった。「地元だからか気持ちが高揚して、アドレナリンが出ていた」。四十歳以上の部で大会記録を4分以上更新した。
毎日十二〜十五キロほど走り込んでいる。「コロナ禍でこの二年は大会がなく、いつでも走れるように走り続けていた」と、蓄積してきた成果を発揮した。
前半の上りはペースを抑え、後半にスピードを上げた。最後の二キロこそペースが落ち、目標タイムを上回ることはできなかったが「思っていた通りのレース展開ができた」。「子どもが大きくなったので、これからは毎年出たい」と来年を見据えた。 (水野志保)
2キロ小学一年親子の部を制したのは、鯖江市吉谷町の会社員、田中博規さん(41)と那知(なち)君(6つ)=片上小。那知君にとっては初のマラソン挑戦で、お父さんとつかんだ初優勝。「勝ててうれしい」と喜んだ。
大会に向けて、自宅近くの川の堤防を中心とした二キロを、四月から週一回走ってきた。成果が実を結び「入賞を目指していたし、親子で走れて楽しかった」と博規さんは笑顔を見せた。
五百メートル過ぎで先頭に立つと、そのままペースを崩さずに走りきった。「ペース配分を考えながら、9分くらいで走りたかった」(博規さん)と狙い通りの展開とタイムで、誰の背中も追うことのない独走。那知君も「また走りたい」と存分に楽しんでいた。 (平林靖博)
2キロ小学二年親子の部は、坂井市丸岡町安田新の会社員、辻村修一さん(38)と長男悠翔君(8つ)=磯部小=が制した。初参加で2位に20秒差をつけてゴールに飛び込み、「二人で『1位を取ろう』と話した。思い通りのペースでいけた」と互いの力走をたたえ合った。
大会に向け、二カ月半ほど一緒に練習した。「まずは体力づくりから」とシャトルランなどに取り組み、本番で成果は結実。修一さんから「早かったね」と褒められた悠翔君は「平たんなコースで走りやすかった。疲れたけど1位はうれしい」と納得の表情で話した。
マラソン歴八年ほどの修一さんは「目標を設定し、達成できた時の充実感が走る醍醐味(だいごみ)。息子にも伝わればうれしい」と目を細めた。 (玉田能成)
2キロ小学三年親子の部は、福井市左内町の市職員、玉村翔希(しょうき)さん(37)と晃翔(あきと)君(8つ)=足羽小=が優勝した。「1位を取りたいと思って練習していたのでうれしい」と喜び合った。
晃翔君は初参加。翔希さんは過去に、親子の部に長男と出場して優勝したことがある。コロナ禍でこの二年は開催されず、晃翔君は念願の初レースに挑んだ。春から山や堤防沿いを走って備えてきた。
折り返しの手前からトップを維持し、晃翔君は「折り返し地点でしんどかったが、お父さんと一緒だったから全部頑張れた」と誇らしげ。「来年は一人で走ってみたい」と意気込んだ。三人兄弟のうち長男、次男と優勝した翔希さんは「三男とまた参加したい」と話した。 (水野志保)
完走後の名水が染みる 本紙・曽根記者
久しぶりのマラソン大会となる記者(23)は、5キロ一般男子三十九歳以下に出場。練習不足という懸念はあったが、風薫る季節の大野を快調に走った。
ペースは一キロ5分を意識。スタートの号砲で飛び出さず、マイペースを貫く。走りを楽しむ余裕が残り、新緑もえる山々や広がる田園風景がサングラスごしでもはっきり分かった。
折り返しでは「まだ半分か」と思ったが、追い風に乗って加速。四キロ手前で人気アニメ「鬼滅の刃(やいば)」のキャラクターに仮装したランナーたちとすれ違い、「ファイト」と声をかけると、応答があり元気をもらう。特に苦しかった最後の一キロもピッチを緩めず、元陸上部の意地を見せた。
記録は23分46秒で目標達成。ゴール後は楽しみにしていた水を数杯ごくり。先輩記者から「日本一の水道水」と聞いた「名水」が骨の髄まで染み渡った。汗が肌をつたい、心臓がドクンドクンと打ち続ける。はつらつと生きている感じがした。 (曽根智貴)
今大会は、さまざまな形で新型コロナウイルスの感染防止対策が取られた。
参加者全員に、抗原検査キットと体調管理チェックシートを事前に配布。当日の提出と体温チェックを求め、全出場者千百二十三人の陰性を確認した。
スタート地点では、密を避けるため、前の列のランナーと二メートル離れて並んだ。最前列から最後列まで距離があるため、タイムは各ランナーがスタート地点を越えた時点から計測する方式を取った。
ほかにも更衣室の入場数制限やゴール後のマスク配布、救護班のビニールエプロン着用など、いたるところで対策を取った。
長谷部佑円大会長と総裁の石山志保市長はスタート前の放送を使ったあいさつで「万全に準備を進めてきた」と参加者に感染対策を呼び掛け、安全な運営に汗を流した関係者らの労をねぎらった。 (山内道朗)
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