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<湖国の現場2022>希少魚で訴える環境 琵琶湖博物館のツチフキ 「初繁殖認定」で記念展示

2022年5月22日 16時00分 (5月24日 11時40分更新)
展示されているツチフキ=草津市の琵琶湖博物館で

展示されているツチフキ=草津市の琵琶湖博物館で

  • 展示されているツチフキ=草津市の琵琶湖博物館で
  • 屋外の水槽でツチフキを確認する川瀬さん=草津市の琵琶湖博物館で
  • ツチフキの卵=琵琶湖博物館提供
  • ガラス越しに見学できる保護増殖センター
 「ツチフキ」という聞き慣れない魚の繁殖をきっかけに、県立琵琶湖博物館(草津市)が自然環境の大切さを訴える。環境省のレッドリストで絶滅危惧種に指定されているツチフキは、淡水魚の研究に取り組む館が大量繁殖に成功。三月、日本動物園水族館協会(JAZA)から「初繁殖認定」を受け、記念展示を開いている。
 水槽の底の近くを、茶褐色の五匹が泳ぐ。館で繁殖した個体をよく見ると、餌を食べるとき、泥ごと口に入れ、エラから泥を出す。その様子から「土吹き(ツチフキ)」という名前が付いたと言われる。
 コイ科の一種で、雌雄で大きさが違う。雄が七〜八センチ、雌は四〜五センチ程度。近畿、山陽、九州北部に分布している。琵琶湖では在来種かどうかは不明で、個体数は少ないものの、今も生息しているとされる。水の流れがゆるやかで、広くて浅い湿地帯を好む。河川改修での浅瀬の減少などで、淀川では既に三十年近く確認されていない。
 「一九〇〇年代の初めには至る所にいたとされるのに、生息地がなくなってしまった。ブラックバスなどの外来種にも食べられてしまう」と館学芸員の川瀬成吾さん(35)=魚類系統分類学、水族保全学=が説明する。「目立たず、産業にも直結しない魚は、研究も後回し。それでも、治水と自然環境のバランスの大切さを私たちに伝えている」
 ツチフキの繁殖は、館にある保護増殖センターで二〇一〇年度に始まった。最初の五十匹から大量繁殖に成功し、これまでに九世代、八百五十匹以上が生まれた。現在は七十匹を飼育している。
 初繁殖認定は、JAZAが繁殖技術向上のために定めた。JAZA所属の施設の中で初めて繁殖に成功し、誕生後六カ月以上生存した生物が対象となる。これまでは「繁殖賞」と言われ、一九年の認定区分の見直しで、この制度ができた。
 認定を受けた琵琶湖博物館の保護増殖センターは、三十七種の希少淡水魚の繁殖に取り組む。液晶パネルに「自然の川や湖などで減少している淡水魚の繁殖を行っています」との文字が表示され、絶滅の恐れがあるゼニタナゴやウシモツゴなどの水槽が、ガラス越しに見える。
 普段も他の淡水魚とともにツチフキを常設展示してきた館は、認定を機にPRを強める。センターのガラスの近くに、研究や活動をもっと知ってもらおうと、ツチフキの水槽を設けた。今後は稚魚や、絶滅の危機にある他の淡水魚を、特別に展示していく計画だ。
 ツチフキの繁殖のための水槽は屋外にあり、中がよく見えない。産卵期は四〜五月で、この大型連休中にも産卵した。職員らは個体の健康状態をチェックし、繁殖に適した泥を入れるなどの工夫を続ける。
 「淡水魚の繁殖は比較的簡単なものが多い」と川瀬さん。「ちょっとした工夫で増える魚が、増えていない環境になっているというのが問題」と指摘する。「記念展示で、絶滅が危惧されている魚がいるということが伝わり、生き物に少しでも配慮される環境になれば」と願う。
 ツチフキの記念展示は九月四日まで。入場は事前予約が必要。

保護増殖広がれば 記者のひと言

 目立たず、食べる魚でもないツチフキ。人間の手で自然環境が破壊され、絶滅してしまう魚がいるのは残念でならない。外来種増加の危惧も続き、生き物と共存する環境づくりは不可欠だろう。
 ツチフキ以外にも多くの淡水魚が絶滅の危機にある。琵琶湖博物館の初繁殖認定と展示をきっかけに、保護増殖の取り組みが私たちの足元にさらに広がればと思う。
 (磯部愛)

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