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安島モッコの会(福井県坂井市) 途絶えた技術 復活し伝承

2022年5月17日 05時05分 (5月17日 14時40分更新)
安島モッコ刺しに取り組む女性たち=福井県坂井市で

安島モッコ刺しに取り組む女性たち=福井県坂井市で

  • 安島モッコ刺しに取り組む女性たち=福井県坂井市で
  • 安島モッコ刺しを施したはっぴ
  • 最重点目標

 刺し子で着物を補強

 福井県坂井市三国町の森岡千代子さん宅に、十数人の女性たちが集まっていた。わいわいと楽しそうな声だが、ただおしゃべりしているわけではない。手には布と針。縫っているのは、この地域で戦前まで受け継がれた刺し子「モッコ刺し」だ。
 戦前戦後で途絶えた技術だった。補強や保温のために幾何学模様の刺しゅうをした和服を、かつてこの地域では「モッコ」と呼んだこともあった。安島(あんとう)は船乗りの町。船乗りの妻は海女として働きながら、夫や子どもの服に独自の緻密な刺しゅうを施した。北前船の寄港地に残る刺し子技術の一つ。生活技術であり、文献はほとんど残っていない。
 復活に取り組んだのが、地元の工芸作家の森岡さんと、刺しゅうが趣味という坂野上百恵(さかのうえももえ)さんだった。百年以上前とされる一着の刺し子から縫い方の法則を虫眼鏡で研究。この技術を「モッコ刺し」と命名し、二〇一七年に「安島モッコの会」を結成した。
 「モッコ刺しはSDGsそのものだね」。会員からあがったそんな声が「ふくいSDGsパートナー」に登録するきっかけだ。「つくる責任 つかう責任」というゴールを選んだ。「モッコ刺しは一枚の布を大事に着続けるための技術。物があふれる時代に生きる私たちの意識をかえって教えてくれる」と会員の一人は語った。
 森岡さんは想像する。家族や近所の女性同士でにぎやかに会話しながら刺した日もあっただろう。仕事が終わった夜に、一人で夜なべして刺した日もあっただろう。子どもに暖かい丈夫な着物を着せてやりたい。隣の旦那の着ている物には負けたくない。そんな思いで一針一針縫っていったのではないか、と。森岡さんは、この技術は今の世の中で大きな意味があると語る。
 「今の子は飢えていると思う。物があふれる時代だからこそ、人の手がかけられた物に飢えている。今は幸せか、と聞かれると、『こんな着物を着て寝られた子はうれしかっただろうな、お母さんが自分のために刺してくれたのを見てうれしかっただろうな』と思う。それが何よりの心の栄養になる」 (藤共生)

【メモ】2017年に結成。会員は20人。普及に向けた毎月1度の教室のほか展示会も開催している。「モッコ刺し」に関心を持った地元の三国高校の生徒が技術を学び、地元の雄島小学校で出前授業を行うなど活動の輪を広げている。

 SDGs 「誰一人取り残さない」という考え方のもと、人種や性別、地域などを超えて地球上のみんながそろって幸せになることを目指す国連の目標。「貧困をなくそう」「すべての人に健康と福祉を」「人や国の不平等をなくそう」など17のテーマ別の目標がある。SDGsは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略。


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