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三味線残したい、人工皮革の調べ 豊橋「プロも満足の質になった」

2022年5月13日 16時00分 (5月13日 16時09分更新)
胴に人工皮革を使った三味線を手にする中野貴康さん=愛知県豊橋市で

胴に人工皮革を使った三味線を手にする中野貴康さん=愛知県豊橋市で

  • 胴に人工皮革を使った三味線を手にする中野貴康さん=愛知県豊橋市で
  • 古来、胴の表皮に使われてきた犬の皮(左)と中野さんが開発した人工皮革=愛知県豊橋市で
 「『ペットは家族』という時代の流れに合わせ、動物の皮を使わない三味線用の人工皮を作りました」。愛知県豊橋市で三味線工房を営む中野貴康さん(64)からこんな投稿が寄せられた。持続可能な開発目標(SDGs)が注目される中、環境配慮や動物保護の意識は、伝統楽器の世界にも広がりつつある。
 五百年の歴史を持つ三味線は、胴にニシキヘビの皮を張る沖縄の三線(さんしん)にルーツがある。ただ、本土ではニシキヘビが手に入りにくいため、身近な犬や猫の皮が使われるようになった。
 ここ数年、津軽三味線の教室も営む中野さんが、犬や猫の皮が使われていることを説明すると、子どもたちから「かわいそう」と声が上がり、入会をあきらめてしまうことが増えてきた。津軽三味線で使う犬の皮は現在、国内では生産しておらず、在庫などに頼るため、張り替える際は一枚五万円程度と高額になるのもネックとなっていた。
 中野さんは「動物の皮に頼っていては未来はない」と危機感を抱き、人工皮革の開発を決めた。三十年前から三味線用の人工皮革はあるが「キンキンとした安っぽい音になり、演奏者を納得させるものはなかった」。
 自ら繊維業者を回り、特殊な布を重ねて加工を施すことで、数年がかりで「三味線らしい、丸みがありながら力強い音」を実現。一年半ほど前に三味線の人工皮「風音(かざね)」(一枚税抜き三万円)を発売し、改良版の「風音soft」(同二万五千円)を今年三月に完成させた。
 犬の皮は湿気に弱く、一年ほどで破れてしまうが、人工皮革は雨の中でも演奏でき、破れにくいため、長く使うことができる。課題だった音色も、「プロも満足できる音の質になった」と自負。特に若い世代の奏者から問い合わせが多いという。
 三味線は象牙を使っていた糸巻きや、べっ甲のばちが早くからプラスチックなどに置き換わってきたが、最後の壁が音に直結する胴の皮だった。「動物の皮を使うのが当たり前と考えていたが、時代に合わせて変わっていかないといけない」と中野さん。さまざまな奏者の音の好みに合わせるため、改良を続けていく。
 (石井宏樹)

脱「動物皮革」相次ぐ

 欧米では消費者の嗜好(しこう)に敏感なファッション業界を中心に、動物皮革の使用を取りやめるケースが相次いでいる。
 高級ブランドのシャネルは二〇一八年にワニやヘビなどの希少動物の皮の使用をやめ、フェイクレザーに切り替えた。英国の百貨店「セルフリッジ」も希少動物のレザー製品の販売を取りやめた。スポーツブランドのアディダスも二一年に人気スニーカーの素材を本革から、再生素材を使った合成皮革に切り替えた。
 三味線以外の楽器にも代替素材の使用を模索する動きが出ている。琴の弦をはじく琴爪はもともと象牙が使われることが多かったが、乱獲や密猟への批判を受け、ファインセラミックスや竹由来の素材を使う例も増えている。

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