広島・堂林ら育てた名将が「一番叱った」プロ初先発の中日・上田 高校時代からプロ向きだと直感した“ある性格”
2022年5月13日 10時11分
◇渋谷真コラム・龍の背に乗って ◇12日 ヤクルト3-1中日(神宮)
昨季日本一のヤクルト相手に、5イニング3失点。恩師は速報アプリで追い、要所は動画で確認した。享栄高の大藤敏行監督である。母校の中京大中京高を率い、2009年夏の甲子園を制覇。堂林翔太、磯村嘉孝(ともに広島)ら何人ものプロ選手を育て上げた名将が、ライバル校の監督に就任し、高校球界をアッと驚かせたのが18年だった。その1期生の中に上田がいた。すぐに「プロ向きだ」と直感した。
「コントロールの良さと、器用なのでいろんなボールを投げられます。でも、それ以上に物おじしないことですね」
マイペースで自信家。2年冬に同学年の高橋宏らとともに、愛知県選抜の一員として台湾遠征に参加したが、帰国後に「高橋より僕の方が上です」と言い切った。しかし3年春に新型コロナの感染が急拡大し、緊急事態宣言が発出。休校し、富山県の自宅に帰っていたが、再合流した直後に、夏の甲子園の中止も決まった。
「慰めの言葉もかけられない中で、上田はこう言ったんです。『仕方ないです。僕はプロを目指して頑張ります』と。こちらが拍子抜けするくらい、プロへの意識は高かった」
甲子園よりもプロ。しかし、決して優等生ではなかったようだ。コーチも含めれば30年近い指導歴がある大藤監督が、苦笑いで振り返る。
「一番叱ったのが上田です。本当に毎日…。富山では『上田が享栄をやめて、転校するらしい』ってうわさが出た。お父さんが本人に確かめたらしいですから(笑)。でもどんなに叱っても、1時間もすれば平気で寄ってくる。あんな選手はいなかったですよ」
そこもプロ向き。手のかかる教え子ほどかわいい。4月に学校をフラリと訪ねてきた。大藤監督の誕生日(13日)を覚えていて、高級ブランドのカードケースを贈ったそうだ。
「ああ、大人になったんだなって…」。支配下選手になると聞いた喜びと、いきなり先発すると聞かされた驚き。初勝利の報告でホロリとする日も、遠くはないはずだ。
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