「世界初を狙ってみたい」東京五輪出場かなわずレフェリー転身 パリ五輪を目指す女子ラグビー桑井亜乃さん
2022年5月13日 06時00分
選手の次はレフェリーで五輪へ! ラグビー7人制(セブンズ)の元日本代表で、2016年リオデジャネイロ五輪に出場した桑井亜乃さん(32)が、レフェリーとして新しい挑戦を始めている。今年3~4月には「セブンズ王国」フィジーで研修し、4月23~24日に行われた太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ熊谷大会では決勝を担当した。目指すは、レフェリーとしての五輪の舞台だ。(大友信彦)
◇ ◇
「去年は選手として出ていたのがウソのようですね」
太陽生命シリーズ熊谷大会決勝のレフェリーを務め終えた桑井さんは、そう言って小さく笑った。
「熊谷は思い入れのある場所なので、ここで吹かせてもらえてうれしかったです」
昨年6月に発表された東京五輪の日本代表入りがかなわず、次の目標を探したとき、以前から誘われていたレフェリーへの転身を決意。24年パリ五輪を目標に据えた。
「誘っていただいたレフェリー部門の方が『パリを目指すのも不可能じゃない』と言ってくださって、挑戦したくなりました」
7月からレフェリーの研修を始め、9月にはツイッターなどで現役引退とレフェリー挑戦を発表。所属するアルカス熊谷の練習試合などで経験を積み、10月のU―18女子セブンズで実戦デビューした。今年3~4月には3週間、男子が五輪連覇、女子が東京五輪で銅メダルを獲得するなど、「セブンズ王国」として知られるフィジーへ“留学”。伝統の大会「マリストセブンズ」で、女子の決勝を含む10試合で笛を吹いた。
「正直、特別扱いだったと思います(笑)。リオ五輪に選手で出たことを言うと、現地のコーチの方に『サプライズだ』と言われました。フィジーで実感したのは、吹きやすい試合は選手がうまいということ。逆に、吹きにくいと感じる試合では、自分の立ち位置にも問題があったりしました」
帰国後の太陽生命シリーズ熊谷大会では、開幕戦、決勝など6試合を担当した。
「課題はフィットネスなので、体を絞りたいんですが『やせるな』と言われてるんです(笑)」
レフェリー経験の浅い自分が重要な試合を任されるのは、選手としての経歴ゆえだ。だから、女子7人制日本代表(サクラセブンズ)のパワフルガールとして最前線で戦ってきたシンボルたる鍛えた体はキープしろ、というのがレフェリー部門の指令なのだ。
パリ五輪まであと2年。選手としてかなえた夢の舞台へは、語学力、レフェリーとしての国際経験の両方を追わなければならないが、「やれることは全部やります」とキッパリ。選手とレフェリーの両方で五輪出場となれば、ことラグビーでは初の快挙。
「世界初を狙ってみたいですね」
大きな目が光った。そこには負けず嫌いの闘争心が燃えていた。
▼桑井亜乃(くわい・あの) 1989年10月20日、北海道幕別町生まれの32歳。現役時代のポジションは7人制ではFW、15人制ではWTBで、現役時代は172センチ、70キロ。帯広農、中京大では陸上競技の円盤投げ選手。ラグビーを始めたのは大学卒業後で、ラガールセブン(現在は解散)を経て立正大大学院に進み、2014年にアルカス熊谷に加入。16年リオ五輪出場。21年に現役を引退し、レフェリーに転身した。
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