お母さんの愛は世界一 絵一本で人生歩みます
2022年5月10日 05時05分 (5月10日 10時25分更新)
▽自閉スペクトラム症 金沢の西花さん
母・志野さん「成長 うれしかった」
読者参加の双方向型企画「Your Scoop(ユースク)〜みんなの取材班」に、金沢市の障害者アート作家の西花天翔(にしはなてんしょう)さん(27)から依頼がもたらされた。時にけんかをしながら温かく見守り、絵の才能を信じてくれる。「つらいとき、いつも一番の味方でいてくれた」という母へのサプライズ。ユースクが一肌脱ぎましょう。(奥田哲平)
【母の日サプライズ手伝って】
僕は自閉スペクトラム症があります。今は絵を描くことで落ち着いています。支えてくれるお母さんにサプライズで感謝の手紙を渡したいです。手伝ってくれませんか?(金沢市の西花天翔さん)
ユースクにメッセージが寄せられたのは三月下旬。普段通う就労移行支援事業所で対面した。西花さんは芸術的才能を持つ知的、精神に障害がある人を支援する「金沢アート工房」に所属。二年ほど前に「夢の中にゴッホとダビンチが出てきた」と一筆書きの迷路アートを思い付き、突然絵を描き始めた。
サプライズを内緒に母親の志野さんに話を聞くと「絵に救われた。なかったらどうなっていたか分からない」と振り返った。障害の影響でコミュニケーションが苦手で、中学時代は友人とのトラブルが絶えなかった。六年ほど前に一時入院した時は志野さんが面会に通って支えた。気持ちの浮き沈みが激しく、最近も交流サイト(SNS)に自暴自棄のメッセージを書き込み、見知らぬ相手から中傷を受けて傷ついた。
緻密で色彩豊かに描かれた迷路アートは少しずつ認められ、今年三月には作品も売れた。「人に見てもらえることで自信が付いてきた」と西花さん。個展開催や作品の商品化など、今後の目標も思い描く。平日は事業所に通い、自宅に戻ってからも夢中になって絵を描く。
志野さんも彩色の相談に乗り、息子を後押し。西花さんの迷路アートには、必ず左下にスタート、右上にゴールが描かれている。「苦しんでいても、必ず人生のゴールにたどり着いてほしい」。そう志野さんはエールを送る。
迎えた母の日。西花さんはサプライズの場として金沢21世紀美術館を選んだ。記者が改めてインタビューを頼み、付き添いの志野さんを呼び出した。かばんから手紙を取り出す西花さんを、いぶかしげに見つめる志野さん。西花さんが三枚につづった手紙を感極まりながら読み上げた。
「泣いたり、笑ったり、けんかしたり、いろんな事があったけど、二人三脚で頑張ったよね。これからは絵一本で人生を歩みます。お母さん、一生懸命、僕を育ててくれて感謝しているよ。お母さんの愛は世界一だよ。温かな愛をありがとう」
サプライズに驚いた表情の志野さん。目を潤ませながら聞き入り「いろいろなことを乗り越えて成長してくれた。すごく立派でうれしかった」と喜んだ。「私の子どもが天翔で良かった」
ユースク取材班に強力な仲間ができました−。今後、月一回のペースで石川テレビの番組「石川さんLive News イット!」とのコラボ企画をお届けします。取材力を結集し、より深く読者の皆さんの疑問や関心に応えていきます。第一弾となる「母の日サプライズ」は十二日午後六時九分から放送予定です。
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