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【石川】医療事故で新生児死亡 市立輪島病院 5825万円を賠償

2022年5月7日 05時05分 (5月7日 10時00分更新)
陳謝する石川県輪島市の坂口茂市長(中)と品川誠院長(左)ら=6日、輪島市役所で(日暮大輔撮影)

陳謝する石川県輪島市の坂口茂市長(中)と品川誠院長(左)ら=6日、輪島市役所で(日暮大輔撮影)

  • 陳謝する石川県輪島市の坂口茂市長(中)と品川誠院長(左)ら=6日、輪島市役所で(日暮大輔撮影)

分娩対応 奥能登に1人

 石川県輪島市立輪島病院の産婦人科の不適切な医療で新生児が昨年六月二日、重篤な状態で生まれ、ドクターカーで転送された金沢市内の病院で死亡した。市は全面的に責任を認め損害賠償として五千八百二十五万円を支払う。坂口茂市長らが六日、記者会見し医療ミスを認めて陳謝した。
 東京都内在住でこの病院で里帰り出産を予定していた妊娠三十五週の妊婦が早朝に出血し、破水を疑って受診し、入院した。容体が安定しており主治医は早産だが、お産は進んでいないと判断。有給休暇を取り正午前に一度病院を離れた。
 妊婦は出血が続くなど容体が悪化し、午後四時前に主治医は病院に戻ったが、帝王切開による出産や、より高度医療を提供できる他院への転送などをしないまま出産となり、新生児は移送先で翌三日に死亡した。
 妊婦は子宮に胎児がいる状況で胎盤が子宮の壁から剝がれてしまう常位胎盤早期剝離を発症していたが、見逃された。病院を離れていた主治医の指示で行われた薬剤投与も、妊婦に説明と同意がなかったという。
 市側は、多量の出血を見た助産師が常位胎盤早期剝離の可能性を感じながら主治医に伝えなかったことも明らかにした。病院は医師が助産師の意見に取り合わない状態になっていたことを示した。病院は再発防止策で医療従事者同士の意見交換の徹底も挙げた。
 院内の医療事故調査委員会は▽主治医が妊婦を残して病院を離れた▽助産師らとの情報共有がされなかった−ことを主たる要因と結論づけた。適切な医療が提供されれば母子ともに健康に退院できたという。
 会見で坂口市長は「ご遺族に対しまして取り返しのつかないことを引き起こし、心よりおわび申し上げます」と陳謝した。母親は現在、健康を回復している。

市長「尋常でない」
医師の確保難しく

 「奥能登に産科医が一人だけというのは尋常ではない。県内に産科医が少ない状況もある」。陳謝した上で坂口茂市長はそう強調した。輪島、珠洲、穴水、能登の四市町には、分娩(ぶんべん)に対応できる医師はこの主治医しかいない。県によると、産科・産婦人科医師はもう一人いるが、健診などを担う。
 主治医は二〇〇五年夏から十六年八カ月勤務。平日の午前八時半〜午後五時十五分に勤務し、時間外労働は毎月十時間ほどだったが、急患や患者の出産に備え、休日も待機要員として病院の近くにいる必要があった。遠出をする場合は金沢大病院から産婦人科医を派遣してもらっていた。
 市立輪島病院の品川誠院長は会見で「医師に負担がかかっているのは事実。一〜四月も夜の帝王切開による緊急手術が三件あり、ストレスがかかっている状態だ」と説明した。
 病院によると、六年ほど前まで奥能登に三人の産科医がいたが、退職などで減った。河崎国幸事務部長は取材に「産科医に限らず、脳や心臓の高度な手術などができず、スキルアップを望む若手医師を確保できない面もある」と述べた。
 金沢市内のあるベテラン産婦人科医は、医師の適正な配置ができていない態勢自体に問題があるとし「悲しい事故は再び起こりうる」と指摘する。「同じ事故を起こさないためにはどうすれば良いのか、地域医療の維持について俯瞰(ふかん)的に考える必要がある」と話した。(日暮大輔、高橋雪花)

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