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嶺南の昔話まとめ出版 美浜の民俗学者金田さん 方言盛り込み臨場感

2022年5月3日 05時05分 (5月3日 09時40分更新)
「若狭あどうがたり集成」を出版した金田さん=美浜町佐田で

「若狭あどうがたり集成」を出版した金田さん=美浜町佐田で


 美浜町の民俗学者金田久璋(ひさあき)さん(78)が、嶺南地域で語り継がれてきた昔話をまとめた「若狭あどうがたり集成」を若狭路文化研究所(同町)から出版した。民俗学の調査の折々に地域の古老や語り部から集めた百三十五話を収録。語りの臨場感を伝えるため、話し言葉や方言を可能な限り盛り込み書き起こした。金田さんは「語り手の息づかいを通して本来の昔話を体感してほしい」と力を込める。 (林侑太郎)
 「あどうがたり」の「あど」は相づちを打つという意味。金田さんによると、あどうがたりは中世以前からの伝統的な昔話伝承の形式として、語り手の語りに聞き手が一節ごとに相づちを打ち、リズムを作り出すことで成立していた。
 相づちは地域によって異なり、美浜町では「オットー」が主に使われた。「あなとーと(ああ尊い)」が転じた相づちで、聞き手が忘れると語り手が催促することもあった。金田さんは昔話の伝承は共同作業だったとして「語り手は厳かに語り、聞き手は常に感謝を表明するような、非常に神聖な行為だった」と話す。
 本は約三百ページ。収録したのは嶺南六市町の昔話。キツネやオオカミなどの動物、正月や盆など行事にまつわる内容など、当時の人々の生活や信仰の様子をうかがい知ることができる。
 これらの昔話は、金田さんが民俗学者として五十年以上にわたって嶺南を中心に信仰や習俗を実地調査してきた際、地元住民から相づちを打ちながら聞き取った。録音したこれらの膨大なデータを図書館員などのグループ「ふくい昔ばなし大学再話研究会」が五年ほどかけて書き起こし、金田さんが本にまとめた。
 今の語り部は現代語訳に編集された昔話の本をもとにしており、あどうがたりのように口承の昔話を語り継ぐ語り部は少なくなっているという。金田さんは「このような形式の昔話集はこの先出せなくなる。日本人の魂のふるさととして、失われつつある昔話の臨場感を感じてほしい」と呼び掛ける。書店などで販売している。

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