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<ユースク> しなのQ&A 「片節句」を避けるのは松本の風習なの?

2022年5月2日 05時05分 (5月2日 10時55分更新)

松本伝統の「押し絵」で作られた五月人形(左)とひな人形=松本市中央で

 五月五日は端午の節句です。本紙公式LINE(ライン)「ユースク信州」に、松本市で人形店を営む三村修子さんから「『片節句は良くない』と言って、人形を買いに来るお客さんがいる。松本の風習なの?」との疑問が寄せられました。例えば、女の子に桃の節句(三月三日)のひな人形だけでなく、端午の節句の五月人形も購入し、両方の節句を祝うとか。県版キャラクターの「おしえてほっしー」と「おやっきー博士」が調べてみました。 (竹内なぎ)

おしえてほっしー

おやっきー博士

  「片節句」とはどういう意味なの? 
  一般的に女の子は桃の節句、男の子は端午の節句を祝う。桃の節句ではひな人形、端午の節句では武者人形やかぶと、こいのぼりなどを飾るよ。ただ松本地域では片方の節句のみ祝うことを「片節句」や「片祝い」と呼び、女の子も端午の節句、男の子も桃の節句を祝って人形などを飾る風習があるんだよ。
 松本市史には、男の子のひな祭りについて「相応なひな人形を贈り、松本市域と周辺の慣習として片祝いを避けている」と書かれているよ。豪華な段飾りではなく、内裏びななどを贈ることが多いようだ。
  たくさん人形を飾ってもらえていいな。でも、なぜだろう?
  はっきりとした理由は分からない。ただ市立博物館の木下守館長に聞くと、背景が見えてきた。そもそも節句は季節の変わり目のこと。一月七日、三月三日、五月五日、七月七日、九月九日の一年間に五日ある。先祖の霊を迎え、それぞれ豊作や健康を願ったり、収穫に感謝したりするんだ。だから本来、男女の区別はなかったそうだよ。
 また松本では江戸時代、松本藩の殖産興業として紙や布で作る「押し絵びな」が登場し、明治末期まで庶民の間で人気を博したんだ。昭和になると立体のひな人形を売る店が増え、今も市中心部の高砂通りには人形店が並ぶ。さらに松本では、五節句の一つの七夕にも、紙や木の「七夕人形」を飾る風習があるんだ。
  昔から人形が暮らしに根付いているんだね。
  そうなんじゃ。木下館長は、両方の節句を祝う慣習は、人形文化の豊かさが背景にあると推測する。「人形の普及を目指した人形店が考え出した風習かもしれない」とも話しているよ。
  そっかぁ。他の地域では珍しいの?
  どうやら、県内では松本地域を中心に安曇野市や大町市、塩尻市でも言い伝えがあるとみられる。松本市立博物館の馬場家住宅にはこの春、大正時代に筑北村の家庭で男の子に贈られたという押し絵びなが展示された。ただ、最近は風習を守る家庭も減っているようだ。
  そもそも、なぜ人形を飾るんだろう。
  節句に飾る人形は災難を背負ってくれる身代わりの意味があったんだ。今では、親や親戚が子どもの健やかな成長を願って飾るものになっている。
 安曇野市豊科郷土博物館の倉石あつ子さんは「子どもが丈夫に育つように、念には念をという思いで両方の節句を大切にしてきたのではないか」と話しているよ。親から子への愛情の表れなのかもしれないね。

おしえてほっしー 信州自慢の満天の星から生まれた。その名の通り好奇心旺盛で、信州のさまざまな話題に関心を持つ。
おやっきー博士 長野の郷土料理「おやき」から生まれた。博学で面倒見が良く「おや、おや」が口癖。頑固なのが玉にきず。

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