本文へ移動

<備える> つなぐ安心、地域の拠点

2022年5月2日 05時05分 (5月2日 05時05分更新)
「みんなのお家 ひなたぼっこ」の庭に置いたかまどの使い方を藤岡喜美子さん(左)に説明する三輪宮子さん=愛知県犬山市で

「みんなのお家 ひなたぼっこ」の庭に置いたかまどの使い方を藤岡喜美子さん(左)に説明する三輪宮子さん=愛知県犬山市で

  • 「みんなのお家 ひなたぼっこ」の庭に置いたかまどの使い方を藤岡喜美子さん(左)に説明する三輪宮子さん=愛知県犬山市で
  • 「遊び庵ポレポレ」の板張りスペースに座り「床に断熱材を入れたので、冬でも底冷えする感じはない」と話す猪飼由美子さん=愛知県岡崎市で
 女性や子どものニーズに寄り添った私設の「自主避難所」づくりを愛知、三重両県の子育て支援団体などが進めている。支援団体が設けた普段の交流場所を使うため、不安な災害時に安心して身を寄せられる利点がある。市町村が開設する指定避難所と行き来してもらい、授乳場所や子どもの遊び場として提供したい考えだ。 (出口有紀)
 愛知県犬山市にある住宅街の一角。二階建て民家の庭には、かまどや石窯があった。「災害時も電気を使わずに炊き出しができます」。同市のNPO法人「こどもサポートクラブ東海」理事長の三輪宮子さんが説明してくれた。
 保育士の資格がある三輪さんは、名古屋市への転居を機に、自宅だったこの民家を子育て支援の居場所「みんなのお家(うち) ひなたぼっこ」として二〇一九年に開放した。普段は発達障害の子どもと親が集まり、一緒に遊んだり、情報交換したりしている。住民と石窯ピザを焼く催しも開く。
 災害時に自主避難所として使おうと決めたのは、名古屋市の一般社団法人「こども女性ネット東海」代表理事で知人の藤岡喜美子さん(67)から提案を受け、趣旨に賛同したためだ。
 藤岡さんは一六年の熊本地震時、子どもや女性の支援に関わったが、多くの被災者を受け入れる指定避難所では、個別のニーズに対応するのは難しいと痛感。東海三県で子育て支援などに取り組む人らと二〇年に同法人を設立し、子どもや女性の支援を担う自主避難所づくりを提案してきた。
 当初は「自主避難所では各種の災害に対応しきれない」と反対の声も少なくなかった。しかし、コロナ禍で指定避難所の「密」が新たな課題となり、風向きが変わった。自宅にとどまる在宅避難や、親類宅などへの分散避難も推奨され、指定避難所だけではない考え方が出てきた。
 今年二月、藤岡さんがあらためて自主避難所の開設を各団体に持ち掛けると、こどもサポートクラブ東海を含む愛知、三重両県の十二団体が十六カ所で開設する意思を示した。
 その一つ、障害者施設を運営する一般社団法人「あすなろ」は、愛知県岡崎市で地域住民らの居場所「遊び庵ポレポレ」を運営している。喫茶店だった建物を居場所にし、二〇年には約百平方メートルの部屋に板敷きのスペースもつくった。
 普段は子育て中の親子と、施設で働く障害者との交流の場になっている。災害時は指定避難所や自宅から休憩に来てもらうことを想定。法人職員の猪飼由美子さん(62)は「三食の提供や寝泊まりは難しい」としつつ、「『完璧にしよう』と構えず、その時にやれることをやり、困っている人を助けられたら」と話す。
 子育て支援に取り組む同県武豊町のNPO法人「スマイリードリーム」も、妊婦や育児中の女性が休憩や授乳に活用できるよう、災害時に活動拠点の家屋を開放する。理事長で武豊町議の桜井雅美さん(51)は「私たちが指定避難所に出掛け、支援が必要そうな人に声掛けしたい」と思い描く。
 こども女性ネット東海は十二団体でネットワークをつくり、自主避難所として使う建物の安全性を確認したり、備蓄を進めたりする方針。交流サイト(SNS)などに場所や支援内容の情報を載せ、支援物資を受け取ったり、保育士や助産師らの助けを得たりする仕組みも整えたいという。
 藤岡さんは自主避難所について「普段からの地域とのつながりが一番の力。それぞれの団体ができることを考える」と説明。ほかの団体も開設に「手を挙げてほしい」と話している。

熊本地震であり方、課題

 二〇一六年の熊本地震では、市町村が学校の体育館や公民館に設置する指定避難所のあり方が課題になった。子どもがほかの人に迷惑を掛けることを恐れたり、更衣室や授乳室がなかったりして、車中泊する人も多かったためだ。一方で、民間の保育園や大学が自主的に避難所を開き、親子や近隣住民らを受け入れたケースもあった。
 東洋英和女学院大(横浜市)の塩崎美穂准教授(保育学)は、熊本地震の時、現地の保育園を巡った。自主避難所を開設した保育園には、一つの特徴があることに気付いた。「さまざまな行事を通して普段から地域住民と顔が見える関係を築き、保護者の信頼も厚かった」という。
 保育園の施設を避難所として使うには、保護者の理解が欠かせない。このため、自主避難所を開設するには「日頃から質の高い活動をすること」が鍵とみる。保育園であれば、地域住民も交えた子育て支援の場をつくることなどを挙げる。
 その上で、災害時は「臨機応変に判断し、自分ごととして考えることが大切」と指摘。自主避難所の開設に当たっては、子育て支援なら地域の保育士との協力を模索するなど「どこと連携すれば効果的なのか、考えて準備をしないといけない」と話す。

関連キーワード

おすすめ情報

防災関連記事の新着

記事一覧