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世代の声、私が議会に 市議選、20代・30代の挑戦

2022年5月1日 05時01分 (5月1日 14時09分更新)
 幅広い世代の声を取り入れるため、課題とされる若者の政治参加。全国の地方議員で、二十、三十代の占める割合は計5%程度にとどまる。実際、選挙に出るハードルは高いのか。地盤や政党の後ろ盾なしで市議選に立候補した二人の挑戦を追った。(下條大樹、寺田結)

「多様性を」再挑戦へ 落選27歳、フリーター

 「一緒に、市を良くしていきませんか」。四月十七日投開票の愛知県北名古屋市議選。後ろで結んだ長髪を揺らし、フリーターの大西雅人さん(27)が訴えた。

27歳で市議選に立候補し、街頭演説する大西雅人さん=4月16日、愛知県北名古屋市で


 名古屋市熱田区出身。大学中退後、レンタルDVD店のアルバイトで生計を立ててきた。政治に興味を持ったのは三年前。国会中継で、議員が鋭く追及する姿が目に飛び込んだ。「すげえ」。格差など、身近な問題を調べるようになった。
 昨年十月の衆院選後、「自分が議員になってもいいのでは」と思い立った。世襲や議員秘書出身の候補者は多いが、「フリーターで低収入の人はいない。多様性が必要だ」。市議選が迫る隣の北名古屋市に引っ越し、選挙準備を始めた。
 髪を切ろうかとも思ったが、ありのままで臨んだ。自転車で市内を回り、議会改革などを訴えると、手を振られたり、「頑張って」と言われたり、予想以上の反響があった。結果は落選だったが、五百票余を得た。
 選挙費用は返還された供託金三十万円を除き、街頭演説用の機材など計約九万円。「フリーターでも挑戦できる。住民と話し、自分が求められていると感じられた」。次の市議選で再挑戦するつもりだ。

「責任の重さ感じる」 当選34歳、新幹線販売員

 同日に投開票された同県清須市議選では、伊藤奈美さん(34)が初当選した。「責任の重さを感じる」と気を引き締める。

手探りの選挙戦を振り返る伊藤奈美さん=愛知県清須市で

 新幹線の車内販売や事務職をしてきた。政治とは縁遠かったが、昨年、社会に貢献する女性を発掘するコンテストに出て、女性や若い議員が少ないと知った。「同世代の声を議会に届けられるのは自分かも」。地元の市議選とタイミングが重なり、出馬を決めた。
 交流サイト(SNS)で票を集めようと考えていた。だが、先輩市議の助言を受け、チラシ配布や街頭演説で、地道に知名度アップに励んだ。
 「無謀」「四年後で」と言われ、手応えもなかったが、八百票以上を獲得して当選。供託金三十万円以外、選挙費用は約二十五万円で収まった。「政治に挑戦したい若者がいたら、私も応援したい」と話す。

中部の若手 志したきっかけは

 中部地方の若手議員にも、政治を志したきっかけや力を入れる取り組みを聞いた。

志智央(しちおう)さん


 二十八歳で愛知県稲沢市議に初当選した志智央(しちおう)さん(35)は作業療法士として患者のリハビリに携わり、市民の健康寿命を延ばしたいと議員になった。
 インターネットで若者から相談を受けることが多いという。選挙権が十八歳以上となり、高校で始まった「主権者教育」の授業に呼ばれる機会も。「年代が近いことで、興味を持ってもらえる」と話す。

中野裕子さん

 一月の津市議選で、最年少で当選した中野裕子さん(26)=共産=は中学生の頃、髪形や髪の色を一律に縛る校則に疑問を覚えたのが政治家を目指した原点という。
 SNSのツイッターのフォロワー数は八千九百人で、一般質問の準備をはじめ、自身の活動をこまめに発信する。「若年層の意見をなるべく募り、議会に反映したい」

塚原甫(はじめ)さん


 岐阜県各務原市の塚原甫(はじめ)さん(32)は「生まれ育った地元で恩返しがしたい」と二十七歳で市議に。昨年二月の市議選では、三千票以上を集めトップ当選した。年配の市議が「自分を育てようとしてくれる」と感じつつ、「これはマスト(必須)ですね」などの横文字の表現が通じず、世代間ギャップを感じることも。
 以前は会社勤めをしていて、政治に参加する時間がなかった。若者が政治に関心を持つために「選挙運動に参加するための休暇制度など、社会の体制の変化が必要」と訴える。

20代0・4%、30代4・7% 全国の市議

 全国市議会議長会によると、昨年7月現在、全国の市議1万8738人のうち、20代は69人(0.4%)、30代は884人(4.7%)だった。一方、最も多い年代は60代の6641人(35.4%)。県・町・村議も同様の傾向だが、町・村議の方が全体的に高齢化している。

 若手の立候補を促すため、長野県生坂(いくさか)村議会では55歳以下の議員報酬を引き上げたほか、同県中川村議会では子育て世代に配慮して議員報酬を加算する仕組みを取り入れた。
 若者と政治をつなぐ活動をしているNPO法人「ドットジェイピー」(東京)の理事長、佐藤大吾さん(48)は「議員が国民、市民の代表だとすれば、人口構成比からみて、若手が全然足りていない」と指摘。若手議員が誕生する効果について「借金や少子化問題を当事者として捉え、未来への投資判断の感度が高い。選挙権のない17歳以下の代弁者にもなれる」と語る。

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