本文へ移動

中日春秋

2022年5月1日 05時05分 (5月1日 05時05分更新)
 一九六〇年代後半、日本のロック音楽の草創期の出来事だそうだ。あるロックバンド。演歌に力を入れるレコード会社と契約していたため場違いなところでも演奏させられた
▼ある日は、島倉千代子さんのショー。司会は青空千夜・一夜。おじいさん、おばあさんが中心の観客の前でレッド・ツェッペリンの派手な曲を演奏したそうだ。さぞ目を白黒させたことだろう
▼歌手の小坂忠さんが亡くなった。七十三歳。六九年、細野晴臣さん、松本隆さん、柳田ヒロさんらとエイプリル・フールを結成し、ボーカルを担当。お千代さんのショーのあのロックバンドである
▼暗中模索の草創期からキャリアを重ね、日本のロックやJポップの礎をこしらえた功労者の一人である。おだやかで繊細にして力強い声。訃報に名盤「HORO(ほうろう)」(七五年)をひっぱり出した方もいるだろう
▼昨年十一月の松本さんの作詞活動五十年コンサートで「しらけちまうぜ」を歌っていた。がんとの長い闘いにも声が衰えていない。娘さんの事故をきっかけに牧師となり、ゴスペル歌手として歌い続けていたこともあろうが、ここに至るまでの経験が声に深みや味わいを加えていた気がする
▼「HORO」の二曲目は「機関車」。<忘れ物はもうありませんねと/機関車は走るのです>−。「昭和の日」に機関車はホームを離れた。拍手で見送る。

関連キーワード

おすすめ情報