昇り竜が広島での1敗を境に急降下…長丁場のペナントレースにも“勝負の分かれ目” 91年の再来は見たくない
2022年4月30日 10時14分
◇渋谷真コラム・龍の背に乗って ◇29日 中日0-1広島(バンテリンドームナゴヤ)
広島にとっては球団創設から4500勝だった。原爆で荒廃した広島の街に、希望をともすべく誕生した市民球団。しかし、低迷と資金難にあえぎ、市民からのたる募金で経営を支えた時期がある。9チーム目の達成。中日は広島に928勝しているが、4500のうち849の白星も献上(70分け)している。
痛恨の1敗がある。1991年9月1日。首位を走っていた中日は、広島市民球場に乗り込み2位の広島に連勝した。4・5ゲーム差で迎えた第3戦。星野仙一監督はライバルに引導を渡すべく、今中慎二までブルペンに待機させていた。
9回2死から、落合博満の起死回生の同点3ランが飛び出したが、その裏にルーキーながらフル回転していた森田幸一がサヨナラ打を浴びる。5・5差ではなく3・5差。それでも勝ち越したのだから…。周囲の楽観ムードを、星野監督は鬼の形相で一喝した。
「絶対にカープにとどめを刺しておかにゃあ、いかんかったんだ!」。この危機意識は現実のものとなる。ここから何と2勝12敗。3年ぶりの優勝に向け、力強く昇っていた竜は、この1敗を境に急降下した。わずか20日後に星野監督辞任のニュースが流れた。チーム成績にかかわらず心に秘めていた辞意だったが、優勝を花道にすることはできなかった。
投手陣は毎回三振を奪った。しかし、攻撃陣が二塁すら踏めなかった。広島は前夜、ブルペンが総崩れで大逆転負けを喫していたのに、大瀬良に117球で投げ切らせてしまった。散発2安打の上に、前夜に続いて四球も取れず。まだ4月、まだ借金1。過度に悲観する必要はないが、本当に「まだ…」と言っていていいのだろうか。
31年前のあの黒星を、立浪監督も「1番・遊撃」で出て知っている。勝負の分かれ目というものは、その打席や試合の中だけでなく、長丁場のペナントレースにも必ずひそんでいる。秋風が吹くころ「宏斗を見殺しにしたあの試合だった」なんて、思いたくはない。
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