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【月刊ラモス】新生国立競技場にJ誕生の熱をもう一度! オールスター、前座で代表OB戦どう?

2022年4月30日 06時00分

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FC東京―G大阪戦の試合前に行われたスタメン発表で上がる花火=国立競技場で

FC東京―G大阪戦の試合前に行われたスタメン発表で上がる花火=国立競技場で

 国立競技場にJ誕生の熱を再び―。新しくなった国立競技場で29日、初のJ1が開催された。FC東京―G大阪の一戦は入場者4万3125人と満員には届かなかった。長引くコロナ禍の影響もあり、Jクラブは観客動員で苦戦し、財政的にも苦しんでいる。日本サッカーリーグ(JSL)からJリーグ誕生、そして創生期を支え、大きなうねりの中で戦ってきたラモス瑠偉編集長は「いまこそ、あの時の熱気が必要だ。いまのJには熱が足りない」ともどかしさを口にした。
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 29日の昼間、J3・SC相模原―YSCC横浜戦(相模原ギオンスタジアム)の前座試合で、日本代表OBチームの監督として地元中学生のセンバツチームと対戦する予定だったが、なんとコロナの影響で中止になってしまった。楽しみにしていただけに残念だ。
 逆に、夜は希望がわいてきた。新しい国立競技場になって初めてのJ1。FC東京―G大阪戦は冷たい雨が降りしきる中、4万3125人のお客さんが足を運んでくれた。満員にはならなかったが、これだけ集まってくれたサポーターに感謝し、FC東京の営業努力に敬意を表したい。
 新型コロナウイルスの影響が長引き、Jクラブは苦しんでいる。徐々に制限が緩和されてはいるが、お客さんがなかなか戻ってこない。1993年5月15日、ヴェルディとマリノスの対戦でJリーグは産声を上げた。国立競技場は5万9626人の大観衆で埋め尽くされ、私たちの繰り広げた死闘に熱狂した。あの時の熱狂と興奮は戻ってこないのだろうか。そんなことはないと信じたい。
 当時の私たちは、必死だった。自分の人生をかけ、日本サッカーの未来を背負って戦っていた。成功しなければ先がないという危機感。その必死さと情熱が観客にも伝わり、Jリーグは大きな社会現象となった。そのうねりは一朝一夕に生まれたものではない。
 最初の仕掛けは1988年のJSL活性化委員会の発足である。89年2月26日のJSL後期開幕戦を国立で2試合開催し、それをターゲットに明石家さんまさんを起用したつり広告を首都圏の鉄道で大展開。新聞広告も大々的にうち、無料招待券も大量にばらまいた。第1試合の読売クラブ―三菱戦が3万5000人、第2試合のヤマハ―日産戦が4万1000人。満員にはならなかったが、手応えはあった。
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 91年11月にはJリーグが設立され、プロ化と並行して進められたW杯2002年大会の招致を両輪とし、日本サッカー界が一気に走り始めた。この勢いがファンの期待と注目度を高め、最後のJSLとなった92年、1月1日に行われた天皇杯決勝・読売クラブ―日産戦が6万人、3月22日のJSL読売クラブ―日産戦も6万人の観衆を集めた。
 日本代表の強化も進み、92年にはダイナスティカップで韓国を破り優勝。同年のアジアカップではサウジアラビアを破って優勝し、初のアジア王者に輝いた。私も読売クラブ、そして日本代表の一員として必死だった。その年の11月23日、Jリーグのプレ大会、Jリーグカップの決勝ヴェルディ川崎と清水エスパルスの一戦は5万6000人を集めた。安全確保のためスタンドの一部を空席にしており、実質満員。プロリーグの誕生、W杯出場への期待感が最高潮に達し、そして93年5月15日、川淵三郎チェアマンが高らかにJリーグ開幕を宣言した。
 試合前、ロッカーで祈りをささげてピッチに飛び出した私はその瞬間、震えが止まらなくなった。5万9626人の観衆をのみ込んだ国立競技場は熱狂と興奮のるつぼと化していた。20歳の時にブラジルから日本に来た私は、この日を待ちわびていた。それは夢のような瞬間だった。こんなスタジアムで試合ができる。なんて幸せな夜だろう。
 試合後、マリノスの司令塔・木村和司と言葉を交わした。「幸せだよな。ここまで引っ張ってきてよかったよな」。ヴェルディは敗れ、ものすごく悔しかったが、それよりも幸福感のほうがはるかに上回っていた。あの夜の光景を、空気を、戦いを、私は一生忘れない。
        ◇    
 いまのJリーグは見る人を魅了し、ファンを喜ばせ、熱くさせることができているだろうか。時代が違うから比べるのもどうかと思うが、Jリーグ誕生のころは下手な選手もたくさんいたけど、とにかくみんな、熱かった。必死だった。その姿が、見る人の共感を呼んだ。いまのJリーグに、その熱があるか。
 最近はサッカーが得意なユーチューバーがいろいろと盛り上げてくれている。ありがたいことだ。しかし、選手がピッチ上でお客さんを魅了しなければ、それも一時的な盛り上がりで終わってしまう。この夜、国立競技場に足を運んでくれたお客さんの期待感とフロントの努力を、選手たちはどれだけ感じてくれただろうか。それに応えるのが選手の使命だ。
 日本のサッカーを盛り上げるためなら、みんな力を貸してくれる。例えば、国立競技場でオールスターゲームを開催するというのはどうなの? 前座で日本代表のOB戦をやってみたらどうなの? 指揮を執るのはラモスとストイコビッチ、そして中田英寿とジーコ。VIP席には殿堂入りしたレジェンドたちがズラリと並んでいる。
 サッカーに携わる人の全てのエネルギーを集中すれば、お客さんは必ずスタジアムに戻ってきてくれる。私はそう信じている。(元日本代表)

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