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「内野ゴロで全力疾走怠った」若手選手呼び出し叱った審判 85年前の逸話が渦中の2人に示す“互いにプロであれ”

2022年4月29日 10時07分

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二塁塁審を務める白井審判

二塁塁審を務める白井審判

◇渋谷真コラム・龍の背に乗って ◇28日 阪神3-2中日(甲子園)
 試合開始23分前。両チームの先発メンバーに続いて、審判員の名がアナウンスされると甲子園のスタンドから拍手が起こった。前夜の三塁からローテーション通りの二塁塁審。悪い意味ですっかり時の人となってしまった、あの審判員である。
 軍事レーダーを応用した最新システムにより、全ての投球の正誤がわかる。僕は「あの1球」の答えを知っているが、忘れてはいけないのは判定する権限は今も機器ではなく生身の人間にあるということだ。確かに審判の態度は大人げなかったが、あの投手の態度も少々子供じみていた。毎日野球を見ていれば「ん?」と思う判定も、後に答えを聞いて「やっぱり」と思うこともある。それでも一流の投手は平然としているものだ。打者は完全に支配できているが、この先は感情のコントロールも磨いてほしい。
 そんなことを考えていたら、悠々自適の大先輩から久々にメールが届いた。中日の選手、監督、選手寮長として知られる坪内道則の『風雪の中の野球半世紀』の一節が添付されていた。大東京の選手だった1937(昭和12)年のこと。試合後に審判室に呼び出された。待っていたのは「オレがルールブックだ」で有名な二出川延明。内野ゴロで全力疾走を怠ったと、坪内は叱られた。なぜ審判に説教? しかもその日は23歳の誕生日。「やたらに腹が立った」が怖くて言い返せない。だから「スパイクで道路の土をけりまくって」帰ったと書いている。
 しかし、頭を冷やすと図星だと気付いた。二出川は他のチームの若手にも、同じように接していることも知った。まだ産声を上げて間もなかった職業野球。ファンに野球を見せてお金をもらう。きっと二出川は今で言うプロ意識を教えたかったのだ。選手と審判は、野球界という同じ船に乗っている。未来の繁栄に向けて、ともに航海する仲間なのだ。だから互いにプロであれ―。85年前のエピソードは、そう教えている。

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