本文へ移動

4月から笹針、焼烙、ブリスターが禁止【獣医師記者コラム・競馬は科学だ】

2022年4月22日 06時00分

このエントリーをはてなブックマークに追加
獣医師記者・若原

獣医師記者・若原

◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」
 あまり表だってアナウンスはされていないのだが、4月1日から中央競馬のルールが一部改正。JRA登録馬について、退厩時も含めて一部の“治療”が禁止された。具体的には笹針、焼烙、ブリスターなどである。
 笹針は1月に当欄で紹介した。焼烙とブリスターは主にソエの治療に使われていたもの。若駒の前脚前面に等間隔に長方形や丸い印のようなものが並んでいるのを見たことがあるだろうか。おおむね長方形なのが焼烙、丸いのがブリスターの跡だ。
 ソエは管骨骨膜炎の俗称で、その名の通り、管骨(中手骨)の骨膜が慢性炎症を起こす。管骨は前肢が着地する時の衝撃をまともに受けるので、物理的なショックで骨膜が傷つくことがあり、それが慢性炎症に発展。馬は痛がる。かなり昔の話だが、ソエが出るというのはそれだけ馬に推進力があるとの理解で、ソエが出たのをめでたがって厩舎で赤飯を炊くという習慣もあったようだ。
 焼烙は焼きごてを使い表面を熱で焼く。ブリスターは強力な発泡剤を使って、表面を化学的に焼く。どちらも、患部にあえて急性炎症を引き起こし、その治癒過程で患部にあった慢性炎症を道連れ的に治すという理論背景が言われていた。
 と、ここまで書いて、お気づきの読者もいるかもしれない。これ、笹針の原稿で、現在では否定的にみられていると紹介した理論背景とまったく相同だ。笹針が科学的には効果が認められないのと同様、ソエに対する焼烙もブリスターも、その効果は、いまや否定的な見方が主流になった。
 焼烙については先に懐疑的な見方が強くなってやや下火に。そこでブリスターが幅を利かせるようになって、5~6年くらい前までは科学的な手法に積極的な某大手生産者もしばしば使っていたようだ。それも今では下火になりつつある。それでも、理論背景が伝統的に信じられてきたため、どちらも一部では継続して行われてきた。
 効果がなければ、馬の皮膚を焼いて痛い思いをさせるだけ。動物虐待との批判も避けられまい。これらの禁止は競走馬の福祉向上を一歩進めるルール改正と理解できる。

関連キーワード

おすすめ情報

購読試読のご案内

プロ野球はもとより、メジャーリーグ、サッカー、格闘技のほかF1をはじめとするモータースポーツ情報がとくに充実。
芸能情報や社会面ニュースにも定評あり。

中スポ
東京中日スポーツ