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“ぶっつけローテ”がトレンドになった運動科学的な理由【獣医師記者コラム・競馬は科学だ】

2022年4月15日 06時00分

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獣医師記者・若原

獣医師記者・若原

◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」
 近年、クラシック1冠目を狙うローテとしてはぶっつけがトレンドだ。近10年を振り返ると、中9週以上のローテで臨んだ馬が桜花賞で【32114】。皐月賞で【21215】と、無視できない好走率を残している。賞金的に出走安全圏の馬にとっては、ぶっつけでもピークに近いあるいはそれ以上の状態をつくることができる環境が整ってきた。
 理由の最たるものは外厩の充実だろう。かつて「放牧」とは、本当に休んでいたことがほとんどだったが、いまやトレセン近郊の放牧先の多くが坂路や周回コースを備える。放牧中も一定の負荷をかけ続けているから、使って状態を上げていかずとも、目標となる大レースにピークが合わせられる。
 中には、外厩の方が大きな上積みをつくることができるケースも出てくるだろう。運動科学の進歩を応用するには、現状のトレセン内の施設では、実施が難しいトレーニング方法が提唱されつつある。
 有力な例が低酸素トレーニングだ。人のアスリートでは高地トレーニングとして知られる。赤血球を増やすなどして有酸素能力を向上させることができる。人ならランニングマシンとして知られるトレッドミルを使用。馬にマスクをつけて吸気の酸素濃度を制御する方法と、トレッドミルを設置した部屋ごと酸素濃度を下げて走らせる方法がある。実験系として便利なのは前者だが、設置コストや実施技術のハードルが低いのは後者だろう。
 馬の特にスタミナ面のパフォーマンスについて、通常の調教で見せていた天井を破り、しばしば限界突破させられることが知られている。常酸素下の調教に戻しても、少なくとも2週間は効果をそのままのレベルでキープできる。その後、効果は次第に減ると考えられているが、おそらく1カ月くらいは限界突破したレベルを保てるだろう。
 馬の運動科学の世界では10年ほど前から注目されはじめていた。時間軸は一致する。現在、低酸素トレーニングの実施を公言している外厩はないが、実施を公にしなければならない性質のものでもないし、黙っていてとがめられる理由もない。1冠目ぶっつけのトレンドには低酸素トレーニングが影で一役買っていると、記者はみている。

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