ナウマン象 崖から10万年前の化石

2019年6月5日 02時00分 (9月11日 14時08分更新)

ナウマン象の骨格標本=浜松市中区蜆塚の市博物館で

  「大変だ、骨が出た」「ずいぶん古い骨だ。それにしても大きい。人ではなさそうだ」
 「これは竜骨という物ではないか。万病に効く漢方薬になると聞いたことがある」
 「牙も出てきたぞ。大昔、伊佐見に象がすんでいたのか」
 1921(大正10)年、浜名郡伊佐見村(現在の浜松市西区佐浜町)の崖から、浜名湖を埋め立てる土をけずり出していた時、化石になった大型の動物の骨が幾つも掘り出されました。
 不思議に思った地域の人は、古生物学に詳しい京都大学の先生に本格的な調査をお願いしました。すると、今まで発見されていなかった新種の象の化石であることが分かりました。日本で初めて象の化石を研究したドイツ人エドムント・ナウマン博士の業績にちなみ「ナウマン象」と名付けられました。

ナウマン象の歯の化石=浜松市中区蜆塚の市博物館で

 ナウマン象は、今から約60万年前から2万年前の間に、日本に生息していたと考えられています。肩までの高さが3メートル、頭までが4メートルほどと考えられ、動物園にいるアジア象とほぼ同じぐらいの高さだったようです。寒さが厳しい環境に適応するため、皮下脂肪が発達し、全身が体毛で覆われていました。雄は長さ2・4メートル、直径15センチほどに達する牙を持ち、雌も長さ60センチ、直径6センチほどの牙を持っていました。
 佐浜町から発掘されたナウマン象の化石は、牙と臼歯、下あごの骨などで、研究の基になる「ナウマン象の模式標本」として、京都大学に保存されています。浜松市博物館には化石と全身骨格模型が展示されています。
 佐浜のナウマン象は、10万年ほど前の物です。本州で最も古い浜北人の化石が1万8000年前ですから、浜松の地で人とナウマン象が出合ったかどうか分かりません。
 浜松市内では、10カ所ほどでナウマン象の化石が発掘されています。
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参考文献:『浜松市博物館報 第30号』浜松市博物館
見学場所:浜松市博物館(中区蜆塚4―22-1)

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