本文へ移動

フレグモーネって何だ【獣医師記者コラム・競馬は科学だ】

2022年3月25日 06時00分

このエントリーをはてなブックマークに追加
獣医師記者・若原

獣医師記者・若原

◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」
 先週当欄で書いた「感冒」もそうだろうが、競馬の世界で取消事由などに付記される病名には、慣れないとイメージがつかみづらいものが多い。先週は騎手変更事由に「急性腰痛症」があった。これも「感冒」と同じで、原因への言及を棚上げした症候群の呼び方。その点では変わりはないものの、少なくない症例がいわゆる「ぎっくり腰」。こちらの方がイメージしやすいだろう。
 毎日杯に出走するディープレイヤーは当初、共同通信杯で3歳シーズンをスタートする予定だったが、フレグモーネでパス。皐月賞まで中2週というこのタイミングからの再始動となった。「フレグモーネ」も、イメージしづらい病名の最たるもののひとつだろう。
 これは「感冒」のごとく症候群を十把ひとからげに言うものとは違って、病態がはっきりしている。和名は「蜂窩(ほうか)織炎」。厩舎社会ではよく「キズ腫れ」とも言う。皮下で起こる細菌性炎症で、しばしば痛みを伴う。
 原因細菌は決まっているわけではないが、多くの症例が黄色ブドウ球菌や化膿(かのう)レンサ球菌。どちらも特段に珍しい細菌ではなく、われわれの生活環境にも存在する。通常は皮膚に付着しても上皮が侵入をブロックして炎症を起こすには至らないのだが、皮膚に傷があると侵入することがある。
 競走馬の場合、目に見えない小さな傷でも、侵入経路になることがあるのが厄介だ。外見上、なんら外傷がない場合でも突然腫れる。キックバックなどでできた小さな傷が原因と考えられる不運。通常の取り扱いをしている前提であれば、誰の責任でもない。
 一方で、細菌性炎症だから治療はシンプル。多くが抗生剤で治まる。痛みがひどくないケースでは動けるが、それでも出走回避につながるのは抗生剤を投与するからだ。競走前の休薬期間の関係で、出走予定を変えなければならないという事情がある。
 ディープレイヤーは共同通信杯1週前の時計を出してから当週を休み、明け金曜から美浦坂路で動いた記録がある。フレグモーネによる「一頓挫」の期間は最低限に抑えられた。フレグモーネの直接の影響は考えに入れず、普通の休み明けとして動きや臨戦過程を評価すればいいだろう。

関連キーワード

おすすめ情報

購読試読のご案内

プロ野球はもとより、メジャーリーグ、サッカー、格闘技のほかF1をはじめとするモータースポーツ情報がとくに充実。
芸能情報や社会面ニュースにも定評あり。

中スポ
東京中日スポーツ