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52年間、人間ドラマを届けた東海テレビ制作「昼ドラ」…それは困難の連続だった【企画・NAGOYA発】

2022年3月25日 12時00分

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東海テレビの「昼ドラ」の初代プロデューサーを務めた出原弘之さん(2001年撮影)

第5回「東海テレビ・昼ドラ」その1
◇きっかけは、東京五輪
 まさに「唯一無二」。1964年、最初の東京五輪の年に名古屋で産声を上げた東海テレビ制作の「昼ドラ」が52年間、214作品、1万3319話を放送し、お茶の間にさまざまな人間ドラマを届けた。今も「土ドラ」に受け継がれるフジテレビ系全国ネットドラマ。58年の歴史はNAGOYA発の金字塔だ。

開局当時の東海テレビ=1958年


  ◇  ◇  ◇
 東海テレビ「昼ドラ」誕生のきっかけは、東京五輪だった。
 同局は58年12月25日に名古屋で2番目のの民放テレビ局として誕生。翌59年3月に東京で開局したフジテレビをキー局と定め、ネットワークを構築する。
 五輪前年の63年、60年から民放初の平日昼帯ドラマを制作していたフジテレビからある提案が来る。五輪の放送で人出が足りなくなり、昼の番組枠の制作を依頼されたのだ。
 2002年1月19日付の中日新聞には「『東京オリンピックに備えてスタッフが出払い、(昼の)枠が埋められない。お宅で何とかしてほしい』と打診があり、当時、編成部員だった出原弘之(初代プロデューサー、故人)が『ドラマをやりましょう』という案が通った」といきさつが紹介されている。
◇第1作は『雪燃え』
 テレビ草創期。人員などで優位な東京、大阪の民放局がドラマに相次いで参入する中に飛び込んだ名古屋の地方局。出原さんは生前、中日新聞のインタビューで「連続ものを作ることによって制作力を養い、全国的に評価されることで局全体のレベルアップを図りたかった」と振り返っている。

「昼ドラ」が始まった1964年5月4日の中日スポーツのテレビ欄


 晩年の出原さんから薫陶を受け、数々の昼ドラ作品をプロデュース、現在は「土ドラ」を指揮する市野直親東京制作部長は「当時はテレビ局が少なく、各局が模索しながらさまざまな番組に挑戦していた。芸能や文芸、映画が好きだった人たちがフジテレビの提案に乗ったのでは」と当時のテレビマンの思いをおもんぱかる。
 「本を読む時間が持てない主婦に、文芸作品をテレビを通じ紹介したい」(東海テレビ社史より)との意図で第1作は人気作家円地文子原作の『雪燃え』に決まった。
 初回放送は1964年5月4日。午後1時30分から15分間(翌日午前7時45分から再放送)でフジテレビ、関西テレビ(大阪)、テレビ西日本(福岡)、静岡放送にネットされた。中日スポーツのテレビ欄には写真付きで「茶道の家元社会に生きる二人の女、萩乃と悠紀子を中心に若宗匠湛一をめぐって、男女の愛憎のもつれを描く。ヒロイン萩乃に東宝の水野久美がテレビ初出演する」などと紹介されている。

東海テレビの昼ドラ第1作「雪燃え」を紹介する1964年5月4日の中日スポーツ紙面


 現在では各局の大型ワイドショーが並ぶ平日正午から午後3時までの時間帯に、当時の名古屋民放3局では8本の帯ドラマがひしめいていた。
 第1作の『雪燃え』について、東海テレビは社史の中で「新聞小説のような魅力で視聴者をテレビの前から離さないというねらいで女の業を美しく妖しく描いて好評を博し、長寿番組の礎を築いた」と評価する。この後、『暖流』『われ泣きぬれて~石川啄木伝』などが制作され、65~66年の『乱れる』は平均30%の高視聴率で、主演の中山仁を一躍スターに押し上げた。東海テレビ制作の昼ドラは大きな反響を呼び、さらに各局が新たなドラマ枠を強化する。
◇1週間に12本を制作
 ただ、名古屋の地方局が帯ドラマを制作することは困難の連続だった。社史は「1週間に12本を制作する強行スケジュール、名古屋に滞在するタレントの確保、さらに毎日15分の中にヤマ場を作り、視聴者を引きつける演出…」と生みの苦しみを記している。撮影は最初、名古屋で行われていたものの、人気タレント確保のため69年から東京に移った。その後、72年からカラー放送、76年から30分枠に拡大する。
 当初の文芸路線から転機をもたらしたのが『番頭はんと丁稚どん』などで上方喜劇ブームをつくったスター脚本家・花登筺の商魂ものや根性もの。大阪・船場の呉服問屋を舞台にした76年スタートの『あかんたれ』(出演・志垣太郎、中村玉緒ほか)は、続編を含め昼ドラ最長の365回が放送された。その後は社会現象になった『愛の嵐』『真珠夫人』などの「ドロドロ」と称される愛憎劇や『花嫁のれん』など話題作が相次ぐ。
 昼ドラ35年目の99年。東海テレビのスタッフが故黒沢明監督、北野武監督らとともに、映画テレビプロデューサー協会が選ぶ「エランドール賞」特別賞を受賞した。東京、大阪以外の地方局としては初の快挙で、授賞式で出原さんは「夜のドラマがひまわりとすれば、昼のドラマはかすみ草。慣れない脚光を浴びて、しぼんでしまわないかと心配です。しかし、大変うれしい」と感慨深げに語った。
 「人間を描くことにこだわる」。半世紀以上、昼ドラの歴史を紡いだスタッフに貫かれている思いだ。
(佐藤芳雄)=続く

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