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<Meet STEAM> 手触りまで再現 3Dゲルプリンター 山形大産学連携准教授・臼井昭子さん

2022年3月21日 16時04分 (3月22日 11時36分更新)

教育分野への導入目指す

 立体物を複製する3D(三次元)プリンターの活用が、ものづくりの現場で広がっています。姿、形に加え、手触りまで再現してしまうのが、山形大(山形市)で世界で初めて開発された「3Dゲルプリンター」です。食品や医療での応用が期待される中、同大工学部では臼井昭子産学連携准教授(50)が教育分野への導入を目指しています。(聞き手・山本克也)

 うすい・しょうこ 1971年、秋田県生まれ。秋田大教育学部を卒業後、地元FM局などでアナウンサー、キャスターを務める。2013~15年、宮城県の私立中学・高校で美術教員。18年から現職。19年、東北大大学院情報科学研究科で博士号(情報科学)取得。専門は美術教育、教育工学。


 ―3Dゲルプリンターは、これまでの3Dプリンターと何が違うのでしょう。
 立体造形物を作る時に3Dプリンターでは金属や硬い樹脂が使われるのに対して、3Dゲルプリンターでは水分を多く含んだゼリー状で、高強度のゲルが素材となります。ゲルプリンターは二〇〇九年に山形大の古川英光教授が開発しました。
 ゲルを使うことで、ロボットの指や人工血管など、これまでの3Dプリンターでは作ることができなかった複雑な形を直接出力することができます。軟らかさや手触りも正確に再現できることから、介護食や臓器の模型といった食や医療などの分野で活用できるよう、企業との共同研究が進んでいます。

軟らかさや手触りを再現できる「3Dゲルプリンター」

 ―教育分野にも生かせると考えたのはなぜ。
 中学と高校で美術教員をしていた九年前、学校には情報通信技術(ICT)の環境が整っていませんでした。デジタル教材が普及すれば授業も面白くなると考え、東北大大学院で情報科学を研究しました。
 その時に古川教授と出会い、研究室を訪問。水槽に漂っていたクラゲが本物と思ったらゲル製で、衝撃を受けました。ゲルプリンターにも興味を抱きました。立体造形の分野の充実が必要だと考えていた私は、今までにない造形の手法として最適と感じ、すぐに教育分野への導入を検討し始めたんです。

3Dゲルプリンターで作った生き物のモデル

 ―教育現場では、どんな効果が見込まれますか。
 昨夏、山形県内の工業高校の生徒に、サメやザリガニといった海洋生物のモデルをゲルプリンターで作ってもらいました。水中に入れてうまく漂うモデルもありましたが、そのまま沈んで動かず、試行錯誤するケースも。「改良を重ねるのが楽しい」との感想も聞かれました。
 こうした実験から、教科を横断した総合学習で有効だと考えます。この実験では、材料に何を使うかは化学の領域。水中で漂う形を考えるのは物理。デザインは芸術的分野。パソコンなどでデザインや形を考えるので、粘土や木彫といったこれまでの立体造形の授業では難しいオンラインでの対応もできます。
 ―今後の課題は。
 教育現場への活用に大切なのは量産化と、操作が簡単になることです。量産化に向けて体験学習の機会を増やし、改良を重ねたい。各校、各教室に一台ずつ設置されるのが理想です。

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