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野村克也さんは忍耐の起用で人を遺した…今の中日に必要な“田植え”の覚悟 岡林、石川昂、鵜飼、高橋宏を使い切れ

2022年3月19日 12時00分

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選手交代を告げる立浪監督=18日

選手交代を告げる立浪監督=18日

◇渋谷真コラム・龍の背に乗って ◇18日 オープン戦 中日1―1楽天(バンテリンドームナゴヤ)
 熱田神宮での必勝祈願を済ませた立浪監督が、覚悟をにじませた。石川昂を使い切る―。伝え聞いた僕が思い出したのは、23年前に野村克也さんが掲げた言葉だった。
 挿秧(そうおう)。田植えを意味するこの言葉に、阪神の再建を託された野村さんは自らの使命と覚悟を投影した。長い低迷が続く老舗球団に、三顧の礼で迎えられた名将は、目先の勝利は求めなかった。大型補強ではなく(してくれない球団をボヤいてはいたが)、自前の選手を徹底的に使い、育成した。在任中は3年連続最下位。「阪神の監督なんてやるんじゃなかった」と亡くなるまでボヤいていたが、植えた苗は黄金色に実り、星野監督が4年後に刈り取った。
 僕は今の中日に必要なのも、球団を挙げて挿秧する覚悟だと思っている。ここ10シーズンでBクラスが8度。もちろん負けていいとは思わないし、最下位予想も望まない。しかし、長年の低迷の根は深い。野手なら岡林、石川昂、鵜飼。投手では高橋宏。そんなチームが経験の浅い選手を起用するのは忍耐を強いられる。植えたばかりの苗は、風が吹けば揺れ、長雨や日照りにも弱い。しかし、辛抱する度量がなければ、やせ細った土壌は実りをもたらしてはくれないのだ。
 「財を遺すは下、仕事を遺すは中、人を遺すを上とする」。読書家の野村さんが好んで使った名言はいくつもあるが、これは明治、大正、昭和と外交や政治の世界で活躍した後藤新平の言葉だ。財産より仕事。仕事より人材。それほどまでに人を育てるのは難しい。この日の相手だった楽天・石井監督を、野村さんは辛抱してヤクルトのエースに育て上げた。日本ハム・新庄監督は褒め、阪神・矢野監督は厳しく根拠を求め、ヤクルト・高津監督はクローザーに抜てきした。共通したのは使い切ったこと。忍耐の起用が人を遺したのだ。
 立浪監督が我慢するのなら、僕も待つ。竜の苗がしっかりと育ち、彼らの力で黄金の稲穂が揺れる日が来ると信じて―。

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