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漆絵の客間に新たな作品 竹園自耕らの板戸がある穴水・泉さん方

2022年3月19日 05時00分 (3月19日 10時27分更新)

泉達郎さんが新たに制作を依頼した漆絵の板戸。竹園の大作と向かい合い、対比する構図で描かれている=穴水町河内で

昌子さん珍寿記念 茶会計画

 穴水町河内の泉昌子さん(94)方の客間には、輪島市の蒔絵(まきえ)師・竹園自耕(たけそのじこう)(一八九二〜一九六七年)と佐藤貞一(ていいち)(一八九九〜一九七二年)が漆絵を描いた板戸がある。一九五二年に二人が泊まり込みで仕上げた大作。今年、竹園の作品の向かいに現職蒔絵師による新たな漆絵の板戸が加わった。二人の作品を大事に守ってきた母・昌子さんのために長男の達郎さん(73)が制作を依頼。入院生活を続ける母が四月二日に九十五歳の誕生日を迎えることを記念し、漆絵に囲まれた部屋で茶会を催したい考えだ。 (森本尚平)

竹園自耕と佐藤貞一の漆絵が描かれた板戸=穴水町河内で

 客間の中心のいろりをコの字形に囲むように三枚の板戸が設けられ、奥の部屋との間を隔てる戸に竹園の漆絵がある。戸の大きさは高さ五尺八寸(約一・七六メートル)、間口二間半(約四・五メートル)。大胆な構図で描かれたアカマツの老木と二羽のツルが見る人をひきつける。竹園は色漆の達人として知られ、金粉を使わず色を合わせることで金色に輝くマツの枝葉が繊細に表現されている。中隙の間口三間(約五・五メートル)の戸には、佐藤がボタンやアヤメ、ススキ、ヤブコウジなどの草花を描いた。
 この作品を見た輪島市漆器産業振興室の細川英邦室長(51)は「当時は金粉が手に入りにくい時代。竹園が得意とした色漆の技法を使い、豪快に筆を走らせている。泊まり込みで下描きもせずその場で描いたのは、今の蒔絵師でもなかなかできないこと」と話す。竹園の作品は同市内でもいくつか現存するが「これほどの大作はなかなかない」と驚く。

4月2日に誕生日を迎える泉昌子さん=達郎さん提供

 二人の作品の隣に、今年新たな漆絵が描かれた。達郎さんは医師として国内外で勤務し、七年ほど前に帰郷したのをきっかけに竹園の作品の対面にも漆絵を設置することを考えた。「長年心の中で思い描いていたこと。二大巨匠の作品と対比するようなものを描いてもらいたかった」と話す。
 輪島市の蒔絵師に制作を依頼。アテの山を背景に、青々と若々しい葉が茂るアカマツと白梅が大きく配置され、裏面にはコブシやササユリ、ハギなど春夏秋冬の草花も描かれている。昨年五月ごろに依頼し、約一年がかりで完成した。達郎さんは「立派なものに仕上がった。輪島塗が誇る芸術的な一面も知ってもらうきっかけになれば」と願う。
 母の昌子さんは、七年前に胃がんを発症し胃を全摘出。病状は快方に向かっていたが、今年一月下旬から入院生活が続く。「母は戦争でソウルから引き揚げる際に茶器を大事に持って帰った。一度も使っているところを見たことはないが、家族皆で集まり茶会を開いて珍寿(九十五歳)のお祝いをしたい」と達郎さん。長寿の象徴でもあるマツやツル、四季折々の草花の漆絵に囲まれた一室で、母と茶をたてるひとときを思い描く。

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