熱島を駆ける ヤマハ発inフィリピン(下) 生産倍増需要取り込め

2019年6月13日 02時00分 (5月27日 05時27分更新)

人気スクーター「Mio」シリーズの製造ライン。旺盛な需要を背景にフル稼働が続く=フィリピン・マルバールで

 サックスブルーの帽子をかぶった作業員が、二人一組で手際良く部品を取り付けていく。マニラ首都圏の南七十キロのバタンガス州マルバールにあるヤマハ発動機の二輪車工場。二万平方メートルの建屋で年間四十万台を生産する。
 屋外には、組み立てを待つ部品を積んだコンテナの列。車種別の製造ラインの高さに合うように、同じ背丈の作業員を集めて生産効率を高めているが、「追いついていない」と駐在員。旺盛な需要を逃すまいと、隣では来年七月の稼働に向けて新棟の建設が進む。
 年間生産能力を八十万台に倍増し、人気の自動変速(AT)スクーター「Mio(ミオ)」の排気量一二五ccのモデルを増産する。投資額は三十一億円。部品倉庫も充実させ「八時間で完成車を出荷する」と製造担当者の鼻息は荒い。

2020年7月の稼働を目指す新棟の建設地。既存の建屋(右奥)と同規模で年間生産台数を倍増させる=フィリピン・マルバールで

 子会社ヤマハ・モーター・フィリピン(YMPH)の創業は二〇〇七年。日系四社の中では後発だが、スクーターのヒットで一九年四月はシェアを34・3%に伸ばし、首位ホンダとの差は2ポイント台にまで縮まった。
 二三年にはシェア40%、百万台の販売を目指す。首位奪取を射程に入れるが、課題もある。
 Mioの最新モデルは七万二千ペソ(約十五万円)。賃金が低い工場労働者の稼ぎの半年分で、安い買い物ではない。日系四社中のヤマハ発のシェアは、マニラを抱え人と金が集まる北部ルソンでは約四割に上るが、所得が低い地方の中部ビサヤや南部ミンダナオは二割台にとどまる。
 道路環境面でも、地方ではATより悪路に強い手動変速(MT)のバイクや、サイドカー(側車)を付けて走るバイクタクシー向けの頑丈なモデルが定着しているのが実情。一六年に発足したドゥテルテ政権は交通インフラの整備を推し進めているが、途上にある。
 YMPHの大杉亨(とおる)社長(60)は「五万ペソ(約十万四千円)を切るインドやインドネシア製の低価格モデルも投入して、地方を攻めていく」と展望。一方で、高所得層には「日本製」を前面に打ち出し、磐田市の本社工場で造る大型車の拡販を狙う。格差に両面から向き合う構えだ。
 七千を超える島からなる特異な国土だけに、安定的な物流システムの構築や、各地の有力販売店との関係づくりも欠かせない。工場新棟の稼働を機に、部品の現地調達率を上げ、地域経済への貢献も進めていく。「アクセルの準備は常にできている」とYMPH幹部の小池宏誌さん(47)。さらなる浸透に向け、ヤマハ発の熱い挑戦は続く。 
(久下悠一郎、写真も)

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