熱島を駆ける ヤマハ発inフィリピン(中) 楽しさ発信 ファン拡大

2019年6月12日 02時00分 (5月27日 05時27分更新)

旗艦店「Y-ZONE」を紹介するヤマハ・モーター・フィリピンの大杉亨社長。国民性を意識したカラフルなスクーターが並ぶ=フィリピン・マンダルヨンで

 マニラ首都圏屈指の商業地区、マンダルヨンにある二輪車販売店「Y-ZONE(ワイゾーン)」。ヤマハ発動機がフィリピンの旗艦店として二〇一六年に開設した。スクーターから大型スポーツバイクまで、あらゆるモデルをそろえたブランド発信の拠点だ。
 バスケットボールのコートが五面は入る広々とした店内を、一日四百~五百人が訪れる。子会社ヤマハ・モーター・フィリピン(YMPH)の大杉亨(とおる)社長(60)は「グループで世界最大の直営店」と胸を張る。
 目立つのはカラフルな車体の多さ。オレンジ、青、黄色…。「派手で人と違うものを好む」(大杉社長)という国民性を意識した。
 政治家の下で働くレイモンド・シルバさん(41)は、華やかな深紅のスクーターがお気に入り。「選挙のシンボルカラーだから」。二輪車とは縁遠かった女性にも好評で、コールセンター勤務のジミリン・パクリバーさん(30)は「他のメーカーにはない色が魅力」と話す。三年前から乗る排気量一二五ccのスクーターは真っ赤なホイールを備える。

併設のカフェにはヤマハ発動機の設立年を示す看板や往年の名車の写真が飾られている=フィリピン・マンダルヨンで

 品ぞろえと共に、アフターサービスの充実ぶりも売りだ。
 店内には、持ち込んだ愛車の整備の様子がガラス越しに見られるカウンターを設置。丁寧に扱われている安心感を与える工夫を凝らす。費用を事前に伝え、待ち時間を表示する明朗会計のシステムも導入。各地の系列店にも徹底を図ることで、一八年の整備台数は三年前から倍増し、売り上げの底上げにもつなげた。
 「ブランドのファンになってもらうことが大事」と大杉社長。YMPHが二輪車の所有者に行った同年の調査では、「次に購入したいモデル」を、ヤマハブランドがほぼ半数を占めるという結果も出た。
 さらに先を見据え、大杉社長が狙うのは「二輪車の地位向上」だ。
 安全性や快適さを知ってもらおうと、女性向けの講習会やイベントを頻繁に開催。Y-ZONEの一角にカフェを設け、愛好家が集えるようにもした。移動の道具にとどまらない「楽しさ」を訴え、より付加価値の高いモデルへの乗り換えにつなげようとしている。
 「二輪車に乗ること自体が挑戦だった」。女性ライダーのパクリバーさんは振り返りつつ、「今では休日に遠方までツーリングに出かけ、旅先で新しい友達もできた」とほほ笑む。
 「1955」。カフェには故川上源一氏がヤマハ発を設立した年を示す看板が掛かる。需要はつくり出すもの-。そんな創業の精神がこの地にも根付いている。
(久下悠一郎、写真も)

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