巨大市場に響け ヤマハのインド戦略(下) 教育現場に将来の客

2020年2月22日 02時00分 (5月27日 05時27分更新)

リコーダーを練習する私立学校の生徒。手前はヤマハのテキスト=インド・チェンナイで

 チェンナイ西部に位置する私立学校「スクラムアカデミー」。中学一~三年の十七人が真新しいソプラノリコーダーで童謡「メリーさんのひつじ」を奏でた。
 三~十七歳の計約七百人が通う同校では、ヤマハが楽器やテキストを販売し、西洋楽器の普及を図る「スクールプロジェクト」を授業に取り入れている。
 楽器の演奏はリコーダーが初めてという中学三年のマラビカ・メノンさん(13)は「まさか学校で音楽を習えるとは思わなかった。全てが面白い」と笑顔。
 フェニー・ダニエル教諭(26)は「西洋音楽を学ぶ授業はインドでは少ない。興味を持つ人が個人でレッスンを受けるぐらいだ」と話し、生徒が親しむ意義を語る。
 リコーダー、テキストがそれぞれ約四百インドルピー(六百円)と比較的安い点が受け入れられ、インドでは二〇一八年のプロジェクト開始以来、百十五校が採用。ヤマハは二二年三月までに五百校に増やす目標を掲げている。

インドの民族楽器の音色を搭載したヤマハのポータブルキーボードを弾く楽器店の客(左)。チェンナイ工場製の「純インドモデル」だ=インド・チェンナイで

 中田卓也社長(61)は「楽器の楽しさを伝えていけば、子どもたちは将来のお客さまになってくれる」と中長期的な視点でプロジェクトの先行きを見通す。
 一九九一年の経済開放以降、シタールなどの民族楽器が主流だったインドでも、西洋楽器の音色は珍しくなくなった。
 チェンナイ市街地で一八四二年から続く楽器店「ミュゼミュージカル」は、二〇一三年にヤマハ製品専門のショールームを設けた。同店のサチン・ダス社長(44)は「経済成長につれ、親が子どもに西洋音楽を習わせる動きが強まった」と指摘。民族楽器の売り上げが落ちる一方、西洋楽器は伸び続けているという。
 ヤマハ製品を扱う店は現在七百店ほど。同社は二二年三月までに倍以上の千六百店に増やすことを狙う。昨年十二月には民族楽器の音色を搭載したポータブルキーボードや、普及価格帯のアコースティックギターの新製品を相次いで投入。チェンナイ工場で生産した「純インドモデル」で知名度向上を図った。
 現地法人ヤマハ・ミュージック・インディアの今西昌之販売部長(54)は「西洋楽器としてアプローチするのではなく、インド音楽との融合を図ることで、演奏人口は確実に増える」と力を込める。楽器店だけでなく、子連れの来店が多い文具店などにも売り込みを強化している。
 サチンさんは、母国の西洋楽器市場の発展を信じて疑わない。「なぜかって? ヤマハがインドに工場を造ったことが証明しているだろう?」
(鈴木啓紀、写真も)

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