巨大市場に響け ヤマハのインド戦略(中) 課題対処、次代の力に

2020年2月21日 02時00分 (5月27日 05時27分更新)

工場新設の苦労を語るヤマハ・ミュージック・インディアの芳賀崇司社長=インド・チェンナイで

 二〇〇四年の中国・杭州以来、ヤマハとしては十五年ぶりに海外に新設したインドのチェンナイ工場。現地法人の幹部や従業員は、さまざまな「未知の課題」と向き合うことになった。
 ヤマハは一三年、商品ごとに縦割りだった事業部制を廃止し、開発、生産、営業の機能別に組織を再編した。それぞれの力を結集して新たな価値を生み出そうと、同年就任した中田卓也社長(61)が推し進めた施策だった。
 その後、楽器の開発・営業は事業部制に戻ったが、今も多くの職場で機能別組織が根付いている。
 チェンナイは、組織再編後に初めて設けた工場だ。現地法人ヤマハ・ミュージック・インディア(YMIN)の芳賀崇司社長(60)は「全社の標準的な工場になるように社内システムを含めて見直しを行った」とした上で、「既存工場のコピーとならない部分が多く、苦労している」と明かす。
 従業員教育では、時間にルーズな国民性を考慮し、朝のラジオ体操や指さし呼称で日本式の規律順守を徹底させた。朝食を提供するのも始業時間を守らせるための工夫で、同工場独自の取り組みだ。努力のかいもあり、労災事故はこの一年で一度も起きていない。
 場内の一方ではポータブルキーボード、もう一方ではアコースティックギターの出荷作業が同時で進む。単一製品の生産が基本の他の工場では珍しい光景だ。今年十月には業務用スピーカーの生産にも乗り出す。
 芳賀社長は「生産現場ではエレクトリック製品とアコースティック製品で流儀が違う部分がある。一緒にやることで善しあしを顕在化させ、課題をつぶしていくことで工場の総合力が向上する」と期待。「既存工場へ展開すれば全体の強化にもつながる」とも話す。
 チェンナイ工場の稼働により、YMINはヤマハで唯一の製造・販売一体の会社となった。生産から出荷までの時間が短く、在庫のリスクが軽減されるほか、市場の反応を製品に反映しやすい利点を生かし、芳賀社長は「将来は開発拠点もインドに置き、市場の生の声をベースにした製品を造りたい」と青写真を描く。
 そして「工場を造る力」の継承にも価値を感じている。「知らない土地でゼロから工場を立ち上げることで、状況に応じた判断力が必然的に身に付く」と芳賀社長。生産や管理部門を束ねる日本人スタッフの経験が、次代のヤマハの力になると信じている。
(鈴木啓紀、写真も)

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