巨大市場に響け ヤマハのインド戦略(上) 「中国の次」 成長照準

2020年2月20日 02時00分 (5月27日 05時27分更新)
 ヤマハが昨年建設したインド初の工場が本格的に動きだした。「第二の中国」と位置付ける有望市場での戦略を現地取材で探った。 

ポータブルキーボードの生産に携わる従業員。箱詰めされる「PSS-E30」(愛称レミィ)は日本でも販売されている=インド・チェンナイで

 数珠つなぎの車列を抜けた先に「YAMAHA」のロゴマークが現れた。インド南部の港湾都市チェンナイの市街地から南へ約四十キロ。日系企業が複数進出する工業団地「ワンハブチェンナイ」に昨年、ヤマハが設けた工場だ。
 一一・五ヘクタールの広大な敷地に立つ二ヘクタールの工場では、従業員三百九十人がポータブルキーボードやアコースティックギターを生産する。ギターの品質管理を担うコーサリア・カマラカンナンさん(22)は「ヤマハと聞いて二輪車を作ると思った」と笑った後、「今は仕事にプライドを持っている」と真剣な表情で語った。
 二〇〇八年に販売会社として設立された現地法人ヤマハ・ミュージック・インディアの芳賀崇司社長(60)は「従業員の能力は非常に高い。中国や東南アジアの工場と比べても遜色ない」と目を細める。
 芳賀社長も関わった新工場の候補地選びは一五年に始まり、他にブラジルやメキシコ、ミャンマー、トルコの名も挙がった。なぜ、インドに決めたのか。ヤマハの中田卓也社長(61)は明快に答える。「人口の多さだ。中国での経験上、人口は非常に大きな力になる」
 〇〇年ごろに本格進出した中国では、経済成長につれて、家計に余裕ができた親が子どもに楽器を買い与えるようになり、市場が急成長。ヤマハは代理店を専売店に変える販売政策も奏功し、知名度を上げシェアを伸ばした。楽器の販売額では一八年、日本に代わり国別のトップに躍り出た。
 インドには中国に次ぐ十三億人超が暮らす。日本の総務省の統計によると、〇九~一八年の人口増加率は11・5%で、国連は二七年ごろには世界一になると見通す。総人口に占める労働人口が増え、経済成長が加速する「人口ボーナス期」に間もなく突入するとも見られ、他の日系企業もインド進出を加速。日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、〇八年の五百五十社から一八年は千四百四十一社と二・六倍になった。
 中国でのヤマハの売上高は二十年で八倍に伸び、現在も成長が続く。同社はインドを「第二の中国」と位置付け、現在四十億円の売上高を二二年三月期に六十億円まで増やす計画だ。
 インドの現在地を「十五年前の中国と同じくらい」と分析する中田社長。バイクではなく「ヤマハと言えば楽器」と呼ばれるような地位を築き上げる挑戦が始まった。
(鈴木啓紀、写真も)
 <チェンナイ> インド南部タミル・ナドゥ州の州都。旧名マドラス。日本の外務省によると2011年の人口は465万人、面積は175平方キロメートル。自動車関連企業をはじめITや食品加工など幅広い分野の産業が集積し「インドのデトロイト」とも呼ばれる。ワンハブチェンナイのほか、日系企業が開発に携わった工業団地が2カ所ある。

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