本文へ移動

「人権侵害」の声も 袋井の自治会が感染者名を回覧

2022年3月13日 05時00分 (3月13日 05時02分更新)
自治会長名で回された回覧(一部画像処理)

自治会長名で回された回覧(一部画像処理)

 袋井市のある自治会で、新型コロナウイルスに感染した住民の氏名が回覧され波紋を広げている。感染者本人の求めによるものだったが、一部住民がプライバシーの侵害だとして問題視。市は慎重な対応を求め、有識者も「やりすぎ」だと指摘する。 (高橋雅人)
 物議を醸しているのは、自治会長名で出された二月十六日付の回覧。感染者の氏名、症状、隔離の状態を記した上で、「感染拡大の注意喚起が目的であり、○○さんから住民の皆様にお知らせして欲しいとの要請を受けて発行いたしております」と書かれていた。
 偏見や誹謗(ひぼう)中傷につながらないよう配慮を求め、自治会の会員以外には拡散しないよう要請した。会長の男性は取材に「狭い世界なので誰がかかったかは知れ渡る。本人の希望もあり、誹謗中傷を避けるためにもちゃんと回覧した方がいいとの結論になった」と回覧に至った経緯を説明する。
 市協働まちづくり課によると、この自治会には約百世帯が所属。加入率は99%を超え、住民の結び付きも強い。「全ての人の顔と名前が一致する」と会長。昨年八月にも感染者の同意を得て回覧板で周知しており、「同意がなければ回覧はしない」と強調する。
 名前を出された住民も「回覧が来たり、野菜をもらったりと普段から近隣の人が来るので、万が一うつしたらまずいと思ってこちらからお願いした」と話す。「心配の電話やメールをもらってありがたかった。回覧を出して良かった」と振り返る。
 ただ、回覧を見た住民の一人は「重大な人権侵害に当たる」と批判。ユースク取材班にも「市や町の発表では氏名はもちろん、学校名さえも伏せられている。会長は会員への感染を防ぎたいつもりかもしれませんが、釈然としません」との投稿が届いた。
 コロナ禍が始まった当初は感染者がつるし上げられる事例が相次ぎ、県内でも感染者の名誉を傷つけるインターネット上の書き込みが問題になった。市の担当者は「今は(携帯電話などの)ボタン一つで世の中に広まってしまう時代」と慎重な対応を求める。
 この自治会では三月末で会長が交代する予定。市の担当者は「自治会内に周知するのが当たり前になってしまうと困る人も出てくる。慣例として引き継がれないようには、してもらいたい」と話している。 

◆法的に問題なしも、有識者「やりすぎ」

 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の偏見・差別とプライバシーに関するワーキンググループの座長を務めた中山ひとみ弁護士(霞ケ関総合法律事務所)は「本人が了承している以上、法的には問題はないが、氏名を載せて回覧するのはやりすぎ」と語る。
 「古き良き共同体の実情があり、良かれと思って回覧した会長の思いは分かる」と理解を示しつつ、百世帯の自治会であれば人間関係や自治会への関わりに濃淡があると指摘。「『感染したら回覧される』と不安に感じたり、『感染した事実を回覧されたくない』と思ったりしても、本当の気持ちを言えない人もいるのではないか」と懸念する。
 「本人が張り紙を出すのは自由だが、回覧は違う」と強調した。
おすすめ情報