サンレイポケットの発馬改善 走路外の地道な調教のたまもの【獣医師記者コラム・競馬は科学だ】
2022年3月11日 06時00分
◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」
金鯱賞に臨むサンレイポケットは昨春までは発馬が遅いために末一手の馬だった。さすがに好位にまで上昇して構えることはないものの、昨秋からは五分に出て中団やや前くらいに構えられるようになってきた。それが天皇賞・秋、ジャパンCの連続4着にもつながった。
発馬が遅い馬にはいくつかのパターンがあるが、同馬の場合、かつては枠内駐立の状態から疾走時の歩法である襲歩(ギャロップ)への移行が遅かった。
馬の歩法は大別して4つ。およそ「歩いている」と了解される「常歩」。下見所でチャカつくと見せる「速歩(ダク)」は左右対称の動きで「トロット」とも呼ばれる。「駆歩」は走っていると受け止められるが、四肢の運び方が3節に分けられる。「襲歩」との違いを「速度」と書いた用語解説をネット上で複数見るが「襲歩」は4節。動きそのものが異なる。
馬にとっては、段階を踏んで歩法を切り替え、加速していくのが自然だ。駐立状態からいきなり襲歩というのは、それなりの訓練を経ないと難しい。だからこそ、少なくない競走馬が、まともに発馬できるようになってからも、最初の数完歩は襲歩の中でも疾走時の「交差襲歩」と前後の位相が逆の「回転襲歩」で出てから、後ろの位相を切り替える。もっさり出る馬は、その前段に駆歩が1完歩入ったりもする。
これを矯正する調教は、フラットワークやハッキングで、歩法を切り替えさせる地道な練習を積み重ねるほかにない。西加助手によればサンレイポケットは毎日王冠の後からハッキングでこの点を重視した調教を積み重ねてきた。
高橋忠師も「能力が高いからそのままでも勝ち上がってきたが、もうひとつ上を目指す時に、そこを一から教え直すことにした」と、その意図を振り返る。主戦の鮫島駿は「学習能力の高い馬だと思う。オーダーに素直に応えてくれる馬」と言う。結果、同馬はいまや、遅くとも発馬3完歩目には交差襲歩に移行できるようになった。前走こそ休み明けの分、体が動ききれずに後方に置かれたが、続戦の今回は積み重ねてきた練習が物を言うはず。発馬五分の中団から、鋭い末脚を繰り出してくれるだろう。
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