企業運動会が県内で人気 ビジネスの新ツールに

2019年11月23日 02時00分 (5月27日 05時26分更新)

秋晴れの下でパン食い競走を繰り広げる地元企業の従業員たち=浜松市南区増楽町の可美公園で

 企業の従業員を集めた運動会が、県内で流行の兆しを見せている。社内に限らず、さまざまな会社や業種で働く人たちが性別や年齢に関係なく交流できるのが特徴。健康面だけでなく、コミュニケーションの活性化や、新たなビジネスにつなげる手法として脚光を浴びている。
 秋晴れの日曜日、浜松市南区のグラウンドに歓声が響いた。「食パン取れよ。あしたの朝飯だぞ!」。声援を受けた男性がロープにつるされた袋を口にくわえてゴールに飛び込むと、仲間に胴上げで迎えられた。
 催しは「えんしゅう企業対抗大運動会」。遠州鉄道(中区)やエフ・シー・シー(北区)、パン製造のマルト神戸屋(東区)など、業種も規模も多様な十五社・団体が参加し、パン食い競走や椅子取りゲームといった種目で得点を競った。
 フットサルコート運営のダニー(南区)を中心とした実行委員会が大運動会を始めたのは二〇一七年。初年の参加は八チームだったが、二年で倍増した。

サッカーは企業混合でチームを組んで実施された=浜松市南区増楽町の可美公園で

 同社広報担当の鈴木知恵子さん(50)は「仕事を円滑に進めるためには、上下間の交流や一体感の醸成が必要」と意義を語る。仕事帰りの「飲みニケーション」が時代遅れとされる昨今。鈴木さんの以前の勤務先でも工場対抗の社内運動会があったが、経費や運営面の負担を減らすため、現在は行われていないという。
 気軽に参加できるようにと、運動が苦手な人にも楽しめる「知力テスト」も種目に取り入れ、サッカーは企業混合チームで実施。最後はドローンで記念撮影した。普段は一人で走っているというはまぞう(中区)の田中寿弥さん(23)は「大勢で動けば団結を感じる。同僚の意外な一面も見られた」と振り返った。
 ラジオ局のエフエム御殿場(御殿場市)も、今年九月に同市と小山町の十三社・団体を集めて運動会を開催。地元に駐屯地がある陸上自衛隊の隊員が各チームに助っ人として加わった。担当者は「経営者間の付き合いはあっても、社員同士は機会が少ない。異業種の人が出会うことで、新たな協業につながれば」と期待する。

◆社内活性へ高まる機運

 業務のIT化や私生活重視の風潮が広まる中、従業員同士のコミュニケーション不足を防ぐため、運動会などの行事に注目する企業は全国的に増えており、これを商機と捉える企業も現れている。
 産労総合研究所(東京)が2000社に行った2014年の調査では、直近の10年間で社内運動会や社員旅行の「見直しや再編をした」と答えた企業は45.1%。その約半数が新たな行事を始めたといい「社内活性化のために活用する機運が高まっている」と分析する。
 企業の運動会運営を請け負う運動会屋(横浜市)の調べでは、17年の国内の運動会の実施件数は236件で、5年前の3.5倍に増えた。同社は「UNDOKAI」として米国やインドでも事業を展開。特にIT業界は、機密性の高い業務を抱え、社内でもコミュニケーションが限られることから、需要があるとみている。
 エフエム御殿場も運動会運営の事業化を模索。担当者は「言葉にたけたパーソナリティーは、司会者として会場を盛り上げられる」と長所を語る。
(久下悠一郎)

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