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中日春秋

2022年3月7日 05時00分 (3月7日 05時00分更新)
 小学校を卒業するときに六年間の思い出を作文にするようにと先生から課題が出たそうだ。ほとんどの級友が原稿用紙、数枚にまとめただけだったが、ある男の子だけは何十枚も思い出を書き連ね、数々の挿絵も加えた
▼転校した学校で田舎者とからかわれたこと、勉強をがんばり、級長になれたこと。林間学校で自然を満喫したこと。それを手作りで製本し、表紙にはタイトルを描き、目次まで付けた。男の子は作家になった。『だるまちゃん』シリーズなどの絵本作家、かこさとしさんである
▼そろそろ卒業シーズンだろう。たくさんの思い出を抱えて学び舎(や)を後にしていく。めでたき門出にもちょっとだけ気になるのは子どもたちの思い出の量のことか
▼既に二年以上続く新型コロナウイルスの流行で休校や学校行事の中止、縮小ということもあったはずだ。友だちと触れ合う機会も減っていただろう
▼<あんなこと こんなことあったでしょう>。卒園式でよく聞く「思い出のアルバム」にそんな歌詞があった。コロナ禍で「あんなことこんなこと」が奪われてしまった子どもたちに同情する
▼行事は減ったかもしれないが、不自由な学校生活の中で、がんばった子どもたちである。コロナの困難にも、たとえば、励まし合い、助け合ったような出来事もたくさんあったはずだと信じている。それは特別で大切な思い出になる。

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