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<教員志す障害者学生>全国初の支援組織 奈良で始動

2022年2月23日 12時00分 (2月23日 12時00分更新)
 全国の障害のある教員志望の学生を支援しようと、奈良県教育委員会は昨春、「全国障害学生支援ならネット」を立ち上げた。相談や学生同士・現職教員との交流などがオンラインでできる全国初の取り組み。教員の障害者雇用率が伸び悩む中、事務局は「障害を理由に夢を諦めないでほしい」と呼び掛ける。(北村希)

ならネットの交流会などの活動に協力している三宅直也教諭。生まれつき両手の指に欠損がある=奈良県葛城市の新庄小で

相談や交流 オンラインで

 ならネットは、奈良県教委が昨年五月、全国の値より低い障害者雇用率を打開しようと運用を始めた。多様な悩みを持つ学生同士がつながるよう、対象を県外にも拡大。現在は全国の学生十数人が登録している。
 事務局では現職教員と元教員ら計三人がチューターを務め、週一回~月一回程度、学生のさまざまな相談に乗る。障害のある現職教員から話を聞いたり、学生同士で交流したりする会もオンラインで不定期に開催。参加学生のうち、奈良県の教員採用試験を障害者枠で受ける人は、一次試験の一部が免除される。
 生まれつき聴覚障害のある奈良県の大学二年男子学生(21)は昨夏、ならネットに登録。教員になった際、緊急時の保護者との連絡などに不安は消えないが、障害のある現職教員の話を聞き、夢が明確になったという。「課題を持つ子に寄り添い、支援できるのが教師の醍醐味だと再確認した」と話す。

「自分だけじゃないと思えた」

 登録する別の男子学生(22)は昨秋、中学校教員の採用試験に合格した。発達障害があり、人間関係が原因で高校のころ休みがちに。勉強が遅れても受験のために一対一で必死に指導してくれた先生にあこがれた。ざわついた場所で特定の音を聞くのが苦手で、不安も尽きないが「学生同士の交流会で『自分だけじゃない』と思えて心強かった」と振り返る。
 自閉症スペクトラムなどの発達障害がある大学院二年の女子学生(24)は二年前、障害を隠して教員採用試験に合格。だがもやもやが残り、結局合格を辞退した。そんな時、大学教員の紹介でならネットに出合った。障害を打ち明けた上で相談を重ねるうちに自信がつき、再び受験。昨秋、障害者枠で合格した。「私も『一緒にがんばろう』と伴走できる教師になりたい」と前を向く。

 文部科学省の調査によると、二〇一九年六月現在、都道府県教育委員会における障害者の雇用率は1・87%で、当時の法定雇用率2・4%を下回る。公立学校教員の一九年度選考試験で採用された三万四千九百五十二人のうち、障害のある人は七十三人だった。


先駆者の助言 力に

 ならネットで交流会などの活動に協力している奈良県葛城市新庄小の三宅直也教諭(28)は、生まれつき両手の指に欠損がある。
 「今日は新しいところです。ノート開けてくださーい」。担任を務める四年生の国語の時間。三宅教諭は両手でチョークを支えて板書し、手際良くプリントを配る。児童は問いかけに元気よく答え、授業は滞りなく進む。
 音楽のリコーダーや家庭科のミシンなどできないこともあるが、専科の先生らが受け持ち、児童がお手本を見せ合うなど自然と補ってくれるという。赴任当初は廊下で擦れ違うと「あ!」と指さす児童もいて、対応に戸惑う同僚教員も。三宅教諭が必要に応じてクラスに出向き、障害や幼少期、趣味の話をしてきた。

児童に課題を配る三宅教諭㊨=奈良県葛城市の新庄小で

 鎌田明美校長は「学校にはさまざまな障害のある児童もいる。今は一つの個性として見られている子が多い」と語る。四年の仲嶋斐名子さんは「最初はどうやって黒板書いて給食食べるんやろ、と思ったけど、今は慣れて何も思わない。他の先生の黒板の書き方が変に感じるぐらい」と笑顔で話していた。同じ障害がある人をまちで見かけ、助けた児童もいるそうだ。
 「頭の柔らかいうちに、障害への身近な認識を持ってもらえたら」と三宅教諭。採用試験当時は「不安もあったが、中学の時の下肢障害の先生から助言をもらったり、ボランティアや教育実習で実際に子どもと触れ合った経験が大きかった」と振り返る。
 ならネットのような窓口は「各大学単位で広がってほしい」と話し、「障害者雇用率の数字だけが独り歩きする状況にはなってほしくない」と願っていた。

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