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カーリングの“影武者”が輝いた日…深夜にリンクを調べ上げた『ことみちゃん』43歳・石崎琴美、銀メダルが美しい

2022年2月21日 16時20分

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カーリング女子で銀メダルを獲得し、笑顔の(左から)吉田知、吉田夕、藤沢、鈴木、石崎

カーリング女子で銀メダルを獲得し、笑顔の(左から)吉田知、吉田夕、藤沢、鈴木、石崎

【満薗文博コラム・光と影と】
 有終の銀メダルが美しい。北京冬季五輪の最終日、女子カーリングの決勝で、日本代表のロコ・ソラーレは終盤、英国に“ギブアップ”して優勝を逃した。だが、予選落ちギリギリの崖っぷちからはい上がり、4年前の平昌大会・銅を超える銀メダルにたどりついた。
 表彰台に4人、いや5人。リード吉田夕梨花(27)、セカンド鈴木夕湖(30)、サード吉田知那美(30)、スキップ藤沢五月(30)…そして、左の端っこに、ひときわ長身、166センチでかつ年長、43歳の石崎琴美が上った。メダルは、まず石崎から夕梨花の首に掛けられ、続いて夕梨花から鈴木、鈴木から藤沢へと掛けられた。そして、最後、右端にいた藤沢が、左端の石崎に歩み寄り、この年長者の胸にもメダルが輝いた。はじけるような5人の笑み。
 誰もが知る、カーリングの盤上には4人の戦士がいる。そしてもう1人、見逃しがちだが、常に影武者がたたずんでいる。格闘技ではないから、盤上の選手に故障は少ない。よほどのことがないかぎり、このリザーブ選手には出番がない。それが、石崎だった。
 そして、オリンピック最終日の2022年2月20日―それが、影武者・石崎が、晴れの表彰台で輝く日になった。「2づくし」―メダルの色も2番手の銀メダル。ご存じの人も多いと思うが、石崎琴美、この世界では有数の人である。02年ソルトレークシティー、10年バンクーバー両五輪に出場した頭脳、経験をしつこく乞われて20年、ロコ・ソラーデに加入した超ベテラン。今大会は5番目の「選手」としてチームを支え続けた人だった。これまで、日本の冬の五輪の最高齢メダリストは、14年ソチ五輪のジャンプ、葛西紀明の41歳だった。
 あまり知られていないが、カーリングには、深夜にリンク整備、調整練習の時間帯がある。石崎はこの時間帯を使い、コーチらと共に徹底的にリンク、ストーンの状況を調べ上げ続けていた。その頭脳は、経験とともに4人の「正選手」に伝えられていたと聞く。便りになる、この年長者を4人は、尊敬と親しみを込めて「ことみちゃん」と呼ぶ。
 どこかで聞いたせりふを想い出すが、4人の中には「ことぶら」という合言葉があったと知った。「ことみちゃんを手ぶらで帰させるわけにはいかない」という合言葉だった。「妹たち」は金メダルに届かなかったことを悔やんだが、このお姉さんは言った。「チームのコミュニケーションは世界一だったよ。この銀メダルは喜んでいいんだよ」。ロコ・ソラーレ、有終の銀メダルが美しい。
 (スポーツジャーナリスト)

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