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対処間違えれば求心力消失…阪神・矢野監督の辞意表明は“望んで抱えた火種”か 侮ってはいけない阪神の『沼と闇』

2022年2月21日 10時40分

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9回、小幡の適時二塁打で生還したロハス(左)をベンチで迎える阪神・矢野監督

9回、小幡の適時二塁打で生還したロハス(左)をベンチで迎える阪神・矢野監督

◇渋谷真コラム・龍の背に乗って ◇20日 練習試合 阪神4―1中日(特別ルール、宜野座)
 阪神の監督がいかに過酷な職業か。少なからず自分の目で見て、耳で聞いてきた。ある監督はデーゲームの敗戦後、移動の新幹線までファンに追い回され、東京から大阪に着くまでグリーン車の個室で怒りに耳を傾けた。球団から就任要請されたある監督は、家族に泣いて反対され、妻からは「離婚します」と告げられた。神宮では試合後に客席の前を通って引き揚げる。敗戦後、ある監督の隣を歩いていた僕の目の前に、単1の乾電池がボトッと落ちた。
 「なぜこんなことが?」と問われれば、それが阪神だと答えるしかない。だから気持ちは分かる。ましてや己の進退は人にとやかく言われる筋合いはない。ただ…。
 阪神・矢野監督の話である。今季限りでの辞意を固めていることは、球団幹部や一部コーチは知っていたそうだ。しかし、それをキャンプイン前日の全体ミーティングで全選手とスタッフに明かすことは、当日まで知らなかったと聞いた。
 辞意は個人の問題だが、表明は組織に関わる。伝えた側はスッキリしただろうが、本当に士気に影響はないのか。矢野監督が一時の感情に流されたとは思わない。感想を求めた中日の選手も「僕らのやることは変わりません」と口をそろえた。しかし、阪神の沼と闇を侮ってはいけない。
 昨季のように開幕ダッシュを決めればいい。誰が監督になっても地位の変わらぬ主力も士気は保てる。問題は開幕からもたついた時と、体制が変われば浮き沈みのある中堅以下の選手である。当然ながら自ら辞めると言ったのだから、後任の報道が飛び交う。するとその気になった有力候補の顔色をうかがい、中堅の腰が浮く…。
 冒頭のような目に遭うのに、誰もがなりたがる。勝てば英雄として語り継がれることも知っているからだ。日本では前例なき表明から3週間。ずっと考えてきたが、僕には望んで抱えた火種としか思えない。うまく対処してプラマイゼロ。間違えれば求心力は消失する。球団のガバナンスとはどうあるべきか。貴重な実証例となりそうだ。

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