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引退馬にリハビリ、殺処分から守ろう 愛知の療法士が人への施術応用

2022年2月14日 16時00分 (2月14日 16時00分更新)
元気に駆け回るモーグリ。右は世話をする武田ゆかりさん=愛知県春日井市で

元気に駆け回るモーグリ。右は世話をする武田ゆかりさん=愛知県春日井市で

  • 元気に駆け回るモーグリ。右は世話をする武田ゆかりさん=愛知県春日井市で
  • モーグリに筋膜リリースなどの施術をする近藤晃弘さん=愛知県春日井市で(フィジオリハ提供)
 競走馬は引退後、現役時代の激しいトレーニングの反動でけがを抱え、殺処分されることが多い。そんな競走馬たちを救い「第二の人生」をサポートしようと、愛知県春日井市でリハビリテーションサービスを手掛ける理学療法士の近藤晃弘さん(38)が、スポーツ選手らに施す医療技術を馬に応用する「セカンドホースプロジェクト」を始めた。 (磯嶋康平)
 同市廻間(はざま)町の牧場「春日井ホースパーク」。十歳の牡馬「モーグリ」が元気に駆け回っていた。現在、近藤さんのプロジェクトで、運動機能を改善する施術を無償で受けている。
 中央競馬など一線で活躍し、二年ほど前に引退して牧場に引き取られた。ボランティアで世話をしているのは、学生時代に馬術の経験がある主婦武田ゆかりさん。引き取られてきた頃の様子を「歩く時に脚がガックンガックンしていた。駆け足もあまりしなかった。獣医師の診察を受けたり、漢方を試したりしたが、なかなかよくならなかった」と振り返る。
 レースを引退した競走馬は通常、馬術など別の競技に転身する。しかし、現役時代のけがを抱えたまま、柔軟な動きが要求される馬術も満足にこなせず、食用となってしまう馬も少なくない。モーグリもそんな悲しい運命をたどりかねない状況だった。武田さん自身、近藤さんの施術を受けており、雑談の中で話すと、近藤さんが「力になりたい」と協力を申し出た。
 近藤さんは、理学療法や作業療法を生かしたリハビリサービスを行う会社「フィジオリハ」(同市)の社長を務める。スポーツ選手やデイサービス施設の高齢者、工場の従業員など、さまざまな世代や職業に合わせたメニューを提供している。
 近藤さんはかつてプロサッカー選手を目指していた。高校時代はインターハイにも出場したが、けがで夢を諦めた経緯があり、リハビリへの思い入れは強い。今回のプロジェクトも施術の可能性を広げようとの試みだ。
 とはいえ人間以外への施術は初めて。近藤さんは馬の身体構造を調べるところから研究を始めた。モーグリが歩く姿から問題がありそうな部分を見極め、「筋膜リリース」と呼ばれるマッサージを試した。激しいトレーニングの影響で硬くなった筋膜の柔軟性を取り戻す施術で、近藤さんによると、通常はアスリートを対象に行うマッサージだが「馬の筋肉の付き方が人と似ていたこともあり、応用できた」という。
 モーグリは昨年十月ごろから左の股関節や腰の施術を受け始め、一カ月ほどで元気に駆け回れるまでに回復。馬術の馬として活躍できるよう今もリハビリに励んでいる。近藤さんは「今後は競走馬だけでなく、困っている動物を理学療法で救っていきたい」と手応えを感じている。

 理学療法士 医学的リハビリテーションの専門職で、国家資格。けがや病気などで座る、立つ、歩くの日常の基本動作が難しくなったり、身体に障害が出る恐れがあったりする人を、自立した日常生活が送れるよう支援する。筋力トレーニングやマッサージといった運動療法、温熱や電気刺激を使う物理療法により動作能力の回復、維持、障害の悪化予防を図る。主な職場は病院、クリニック、介護関連施設など。


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