15歳のカミラ・ワリエワが自らドーピングに手を染めたとは考えられない…悲劇の裏側には指導者の仮面を被った大人がいる【北京五輪】
2022年2月10日 16時42分
【満薗文博コラム・光と影と】
大会の華はしおれるのか。北京冬季五輪は、咲き立てのヒロインが、新たな名花として咲き誇る舞台になるはずだった。15歳のロシア娘、カミラ・ワリエワに注がれる世界の目は、称賛から落胆へと代わった。突如、急浮上した禁止薬物使用の疑惑に胸が痛む。
開幕を華やかに告げるフィギュア・スケートの男女混合団体戦で優勝したROC(ロシアオリンピック委員会)の主役になったのは、間違いなくワリエワだった。それが、暗転して、いま、疑惑の目が、この少女に集中している。
各国代表が、祖国の名、旗の下に集うとき、ロシアは国の代表の名を剥奪され、国旗、国歌を許されず同国五輪委員会の代表としてのみ参加を許される辛い立場である。それもこれも、かつてドーピングがはびこり、その撲滅に動いたIOCを頂点とするスポーツ界に非協力的だったことが根底にある。国を代表する選手として認められず、あくまでも個人としての参加が認められている。冬は2014年ソチ大会から、今大会まで、その不名誉が続く。
私には15歳の少女が、自らの意思でドーピングに手を染めたとは考えられない。一歩間違えたら栄光から暗闇に転落する道を、少女が自ら選ぶとは思えない。ワリエワに「クロ」の判定が下されたら、1人のスポーツ少女が哀れである。
かつて、筆者は、1人のアスリートが転落の道を歩むことになったとき「当時(事)者」だった。1988年9月24日。ソウル五輪男子100メートル決勝で、ベン・ジョンソン(カナダ)は、文字どおり「瞬間的に」、最大のライバル、カール・ルイス(米国)を破り、9秒79の「世界新記録」で「優勝」した。それから3日後、27日の紙面で、ベンのドーピングを暴いたのは、私も一員だった中日新聞特派員グループで、世界的スクープだった。
ベンは、直後にオリンピックから追放され、ソウルを去った。その後、汚された金メダルの裏側に悪しき指導者、医者らの暗躍があったことが分かった。だが、26歳だった彼が、再び競技の世界で輝くことはなかった。
一瞬の輝きー。その後にやって来るつらい暗闇ー。15歳のロシア娘に起きるかもしれない悲劇の裏側には、やはり指導者の仮面を被った大人が存在しているのだろう。カミラ・ワリエワ、まだ若い。疑惑が本当なら、汚れのない華になって帰ってきてほしい。
(スポーツジャーナリスト)
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