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<わが街ぶらり探訪> 春日井「古本屋かえりみち」

2022年2月9日 05時00分 (2月9日 16時10分更新)
児童書も充実する「古本屋かえりみち」をオープンした池田育望さん(右)と望未さん夫婦=春日井市旭町1で

児童書も充実する「古本屋かえりみち」をオープンした池田育望さん(右)と望未さん夫婦=春日井市旭町1で

  • 児童書も充実する「古本屋かえりみち」をオープンした池田育望さん(右)と望未さん夫婦=春日井市旭町1で
  • 元種苗店の古民家をリノベーションしたシェア店舗「TANEYA」=春日井市旭町1で
 春日井市の勝川駅から国道19号に抜ける商店街の古民家二階に今月、古本店がオープンした。「かえりみち」という名のその店を出したのは、市内に移り住んで間もない二十代の新婚夫婦。スマートフォンやタブレットで読める電子書籍が普及する一方で紙の本離れが言われる中、「だれもが“ひとり”にかえる場所」にと、二人が思いを託した店のページを開いてみた。 (小林大晃)
 勝川駅前通商店街のちょうど真ん中、築九十年ほどの趣ある木造二階建ての古民家に「TANEYA」の看板が掛かる。元種苗店をリノベーション(改装)し、起業を目指す若手経営者にスペースを貸し出しているシェア店舗だ。
 かえりみちはその二階、少しばかり急な階段を上りきった右手奥の一室にある。六畳ほどのこぢんまりとした空間に、児童書や文芸、芸術など多彩なジャンルの千五百冊以上が並ぶ。店内は、こだわったという明るすぎない照明に、古民家の落ち着いた雰囲気が漂い、本への没入感を高めてくれる。床に座り込んで読んでもいいという自由さも売りだ。
 店を営む池田望未(のぞみ)さん(26)は以前、子どもの本専門店「メリーゴーランド」(三重県四日市市)の店員だった。夫の育望(いくみ)さん(29)は元小学校教員で、特別支援学級を担当していた。ともに本好きで児童書との関わりが深く、店の蔵書も読み聞かせの絵本などが充実している。選書は文芸が望未さん、芸術が育望さんと夫婦それぞれの得意分野で分けている。
 望未さんはメリーゴーランドで働く中で「いずれは自分の本屋を持ちたい」と思いを温めてきたという。結婚を機に退社し、個人でカフェなどを巡り本の委託販売を行っていた。TANEYAの存在を知ったのはその頃だった。
 日本の書籍流通は、取次会社が出版社から仕入れ、書店に配本するかたちが一般的で、信用力の低い個人が新刊書店を開業するのはなかなか難しい。一方、古本店は古物商許可を警察署に申請すれば開業できる。本は他の古本店を回って買い集めたり、個人から買い取ったりして用意した。「自分の好きなものをより深めてくれる本」を基準に選んだ。
 大量に本が出版され、すぐ絶版になってしまう現状を、働きながら見てきた望未さんは「出版された本を処分に回る前に新しい人に知ってもらうサイクルは、個人でもつくれる。時代を超える古本には、思いがけない出合いもある」と話す。育望さんも「本から離れがちな時代だからこそ、古本屋があらためて必要なのではないか」と語る。
 帰り道にふらっと寄れる−。そんな店を目指し、営業時間は帰宅時間に合わせた正午〜午後七時。月、火曜定休。日曜日はイベントデーとして、出張販売やワークショップなどを行う予定だという。

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