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【石川】西村賢太さん死去 54歳、芥川賞「苦役列車」

2022年2月6日 05時00分 (2月6日 10時55分更新)

西村賢太さん

作家・藤沢清造に傾倒 隣に生前墓
ゆかりの七尾「ショック」

 石川県七尾市出身の作家藤沢清造に私淑し「没後弟子」を自任していた西村賢太さん。一月二十九日の命日を「清造忌」とし、同市小島町の西光寺で月命日の墓参を欠かさなかった。没後九十年の今年も、追悼会を開いたばかりだった。
 二〇〇二年に藤沢の墓の隣に自身の生前墓を建立し、墓の文字も藤沢の筆跡から抜き出すほど徹底していた。突然の訃報に同寺住職の高僧英淳さん(69)は「信じられない。頭が真っ白」とショックを隠さない。
 高僧さんは、西村さんが「(藤沢の)全集を出したら自分の仕事は終わる。後追い自殺する」と話した時のことを覚えている。高僧さんの亡き母、政子さんが「そんなことを言うなら出入り禁止にする」ととがめると「撤回します。死にませんから」とうろたえていたという。

藤沢清造の墓(左)に手を合わせる西村賢太さん。(右)は自身の生前墓=1月29日、石川県七尾市小島町で

 今年一月七日に七尾を訪れた西村さんと酒を酌み交わしたという藤沢の遠縁、藤沢外吉さん(76)は「埋もれた清造を世に出してくれたのは賢太さん」と感謝。西村さんは、今月十二日に七尾市立図書館でオープン予定の「七尾ふるさと文庫館」のため、藤沢の資料や著書も寄贈していた。
 デビュー前から親交のあった金沢市の編集者、勝井隆則さん(66)は、西村さんの藤沢への傾倒ぶりを「破滅型の藤沢の人生に自身を重ね、すがっているようにも感じた」と振り返る。西村さんが七尾市の拠点にしたマンションの部屋を、かつて訪れた時に「家具はないのに、藤沢の資料だけは立派なガラスケースに入れていたのが忘れられない」と話し、「全集を出せなかったのは、さぞ悔しかっただろう」と思いやった。

前日に本紙記者と電話

 西村さんは藤沢についてのエッセーを本紙に寄稿する予定で、亡くなる直前の四日午後に記者と電話で打ち合わせしていた。元気な様子だったが、石原慎太郎さんが一日に亡くなったことに「まだショックを引きずっている」と話していた。(大野沙羅、松岡等)

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