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変わる高校国語㊤科目再編 小説教える時間に「苦慮」

2022年2月2日 12時22分 (2月3日 15時46分更新)
 4月から始まる高校の新学習指導要領で、国語の必修科目として新設される「現代の国語」。実用的文章を学ぶ科目で、文部科学省は題材に評論や法令、契約書などを想定していたが、唯一小説を掲載した第一学習社(広島市)の教科書が2022年度の採択数トップに躍進した。採用した現場の教員からは「新課程では小説を教える時間が1年の『現代の国語』しかない」などとの本音も漏れる。(白井春菜、山本克也)

小説掲載の教科書が採択率トップ

 新学習指導要領では、現行の必修科目「国語総合」を、実社会で必要な力を伸ばす「現代の国語」と、小説や古典、漢文を学ぶ「言語文化」に再編。文科省は「現代の国語」の教材には「論理的・実用的な文章」を求め、説明文や評論文、新聞記事、企画書、法令、契約書などを想定。「小説や詩などの文学的な文章を除く」としていた。

現行の「国語総合」の教科書。芥川龍之介の小説「羅生門」は定番の教材だ

 しかし昨年12月に同省が公表した教科書採択結果によると、8社17点のうち、芥川龍之介の「羅生門」など小説5作品を載せた第一学習社版が16・9%の採択率(採択数19万6493冊)で最多に。地域別では、愛知県では定時制・通信制などを含む県立高171校のうち最多の34校が同書を採択した。滋賀県立高も51校のうち13校と最多。一方、福井県では採択した県立高はなかった。

中部9県で第一学習社の「現代の国語」を採択した高校数
・愛知34(171)★ ・滋賀13(51)★ ・富山10(39)★ ・三重10(57)★※他社と同数 ・岐阜12(72) ・長野11(84) ・石川7(45) ・福井0(32) ・静岡11(99)
かっこ内は全校数(定時制などを1校と数える県もある)。★は県内で最多

大学受験も視野に


 「小説を題材に学ぶことで感性や情緒が育まれ、表現力や思考力の土台になる。授業で扱わないなんて考えられない」と、岐阜県立高の国語教諭。生徒の大半が進学する勤務校は第一学習社の教科書を採用した。「国語総合」で使っている他社から切り替えた形だ。難解な文法なども教える古典や漢文は時間がかかる。「1年生に言語文化の授業だけで古典も小説も教えるのは無理。他の教科で必修科目も増える。国語だけに時間を割くわけにはいかない」
 2年生以降の選択科目で、小説も扱う「文学国語」も学べるが、大学受験を視野に入れると古典と現代文を押さえられる「古典探究」と「論理国語」の組み合わせが選ばれやすい。「小説を教えられるのは1年の『現代の国語』しかない」と、時間数のやりくりに苦心する。
 同じく同社の教科書を採用した滋賀県立高の国語教諭は「教科書の全内容を教えられるわけではない。題材を選ぶ時にバランスが良く、使い勝手が良さそう」と選定理由を挙げた。「国語総合」も同社の教科書を使用しており、「教科書が変わると教材研究の時間が必要になる。課程が大きく変わるので、教科書は教員が慣れたものをと考えた」とも話す。

他の出版社は憤り


 第一学習社の編集担当者は「現場の先生からは、古文、漢文、小説、詩歌を学ぶ『言語文化』は時間の制約があって厳しいため『現代の国語』で小説を扱いたいという声があった。検定に落ちるリスクを承知でチャレンジした」と小説掲載の理由を話す。同社の、構成や内容を変えた21年度「国語総合」教科書四種類の採択率7・2~2・9%と比べれば飛躍した。
 「文科省の事前説明では『現代の国語』に小説が入る余地はないと言われた。可能性が少しでもあったなら、小説を載せられないか検討した」と憤るのは、他の出版社で高校の国語教科書を担当する編集者。「国は今後の検定を一層厳正にするというが、学習指導要領の基本的な枠組みが崩された」と語気を強めた。

背景に情報化社会


 新学習指導要領によると「現代の国語」は、実社会に必要な国語の知識や技能を身に付け、論理的に考える力、共感し想像する力を伸ばし、伝え合う力を高めることが目標だ。他者や社会に関わろうとする態度を養うことも盛り込まれている。
 課程や教科書が変わる背景には、経済協力開発機構(OECD)の国際学習到達度調査(PISA)で、日本の十五歳の読解力は2012年は4位だったが、15年は8位。新指導要領が示された18年には15位まで低下したことも挙げられる。インターネット上の文章から情報を探し出し、信ぴょう性を評価する能力や、自分の考えを説明する力が低かった。国は情報化の進展も踏まえながら、子どもの国語力の強化を掲げる。
 学習指導要領の改定を検討する文科省の諮問機関・中央教育審議会は、高校の国語科について「教材への依存度が高く、講義調の伝達型の授業に偏っている傾向がある」「話し合いや論述といった、話す・聞く・書くの領域の学習が十分できていない」などの課題を示していた。
「変わる高校国語㊦識者に聞く」の記事はこちら

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