日本代表の救世主的な存在となった伊東純也、ゴール量産の陰に…彼が作り上げた『方程式』があった
2022年1月29日 21時45分
◆コラム「大塚浩雄のC級蹴球講座」
日本代表でヘンクFW伊東純也(28)が27日の中国戦でゴールを決めた。ベトナム戦、オマーン戦に続き、3試合連続ゴールだ。最終予選に入り、得点力不足に苦しむ日本代表にとって、いまや救世主的な存在。オーストラリア戦から3トップの右サイドを切り裂き、決して豪快なゴールではないが、確実に決めている。そのプレーを分析すると、伊東の作り上げた“ゴールの方程式”が見えてくる。
▽ベトナム戦 大迫勇也のパスを受けた南野拓実が左サイドを駆け上がり、グラウンダーのクロス。右サイドに詰めた伊東がゴール。ゴールライン手前3メートルのシュート。
▽オマーン戦 三笘薫が左サイドをドリブル突破し、クロスを入れる。右サイドに詰めていた伊東がボレーでゴール。ゴールライン手前2メートルのシュート。
▽中国戦 左サイドスローインのリターンを中山雄太が間髪入れずクロス。右サイドから飛び込んだ伊東がヘディングでゴール。ゴールライン手前7メートルのゴール。
ゴールにはならなかったが、オーストラリア戦で決勝ゴールとなったオウンゴールの時も、伊東はしっかりと詰めていた。この時は左サイドの浅野拓磨が切り込むと同時に動き始め、浅野のシュートに対してゴール右ポストに向かってダッシュ。伊東が飛び込んできたため、相手DFが外にクリアできない状況となり、オウンゴールを誘発している。
3つのゴールに共通しているのは…。
(1)ダイレクトで、至近距離からのシュート。ペナルティーエリアどころか、ゴールエリアの内側が2本、ペナルティースポットの内側から1本。ゴールの近くまで進入し、ポジションをとる。このため確実性が非常に高く、DFやGKも防ぎようがない。
(2)動き始めるスタートポジションはゴール右ポストの延長線上。左サイドの選手とボールの動きを見ながら、ゴールに向かって動き始めている。
(3)ポジションは絶えずオフサイドラインの少し手前。自身のスピードを生かすため、ボールの位置より前に出ない。
アタッカーで大事なのは、いかにして相手ゴールの近くでプレーするかだ。センタフォワードの大迫、左サイドの南野のシュートが入らない最大の原因は、シュートの位置がゴールから遠いことだ。遠くなればテクニックとパワーが必要になり、さらにボールとゴールの間にDFとGKが多く存在するため、シュートコースが限定される。
これに対して伊東のシュートは実にシンプルだ。ポジション取りの競り合いで見せるスプリントは鋭いが、フィニッシュは触るだけ。中国戦のゴール後、「雄太(中山)からいいボールが来たので、浮かさないことだけを意識して合わせるだけでした」とコメントしている。
このときは前田大然が伊東の前からニアポスト(このときはゴールの左ポスト)に向かってスプリントし、2人の中国DFの視線を引きつけたため、伊東が完全にフリーな状態になっていた。前田の動きが生きたのも、伊東のポジショニングの妙があればこそ。
度肝を抜くスーパーゴールも1メートルのワンタッチシュートも1点は1点。伊東の「ゴールの方程式」は他のアタッカーにも十分当てはまると思うのだが…。
▼大塚浩雄 東京中日スポーツ編集委員。ドーハの悲劇、94年W杯米国大会、98年W杯フランス大会を現地取材。その後はデスクワークをこなしながら日本代表を追い続け、ついには原稿のネタ作りのため?指導者C級ライセンス取得。40数年前、高校サッカー選手権ベスト16(1回戦突破)。
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