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【北の富士コラム特別編】郷土の大先輩、雷電はあまりにも強すぎて横綱になれなかった。その点、御嶽海にはそんな心配はない

2022年1月27日 05時00分

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口上を述べる御嶽海(中央)=東京都墨田区の出羽海部屋(代表撮影)

口上を述べる御嶽海(中央)=東京都墨田区の出羽海部屋(代表撮影)

26日、日本相撲協会より使者が来て、正式に御嶽海の大関昇進が決まりました。場所前には一体、誰が新大関が誕生すると思ったでしょうか。
 思い返せば初日のテレビ放送で、舞の海君が私にこう質問してきました。「もし御嶽海が全勝優勝なら大関昇進はありますかね」。私は「それは悪い冗談」と一刀のもとにきり捨てました。しかし、そうは言ったもののまんざら無い話ではないなとひそかに思ってもいたことは確かです。
 場所は両大関が大乱調で、序盤で優勝争いから早々と消えていきます。これはいつものことです。大した驚きはありません。むしろ、予想外の安定した相撲で勝ち進んでいる御嶽海に驚きを感じていました。
 大本命の照ノ富士はヒヤリヒヤリとさせながらも勝ち進んでいたので、やはり終わってみれば照ノ富士の優勝は間違いないだろうと、私は信じて疑いませんでした。しかし、当の照ノ富士が6日目に玉鷲に1敗を喫します。それでも私は放送やコラムで、御嶽海はそのうち崩れると言い続けました。理由は相撲にむらがあるから。そのうちに本性を現すだろうと。10日目に同期のライバル、北勝富士にいいところなく一方的に押し出されて負けます。私は、これで御嶽海は本来の相撲に戻るだろうと思ったものです。
 逆に照ノ富士は内容がどんどん良くなってきたので、収まるところに収まると思っていましたが、12日目に明生に肩透かしで敗れました。土俵下に落ちた照ノ富士に異変が生じたようです。
 一方の御嶽海も阿武咲にうまく取られて2敗となりました。この2人に阿炎が加わり優勝争いは混沌(こんとん)としてきました。しかし、照ノ富士は一気に崩れ始めます。後日、本人はかかとを痛めたと言っていますが、私は本当は膝の方だと思います。
 その話は置いといて、御嶽海の方は13日目に事実上の決定戦と思われた阿炎を気迫の相撲で退け、そして言うまでもなく力の出ない照ノ富士に勝って3度目の優勝を手にしました。
 私は照ノ富士に何かがあった時は誰にでもチャンスがあると言い続け、その通りになりました。しかしながら内心はじくじたるものがあるのは確かです。照ノ富士は昇進した時から「私は横綱としての生命は短い」と述べています。自分の体は自分がよく分かっています。場所前から膝のことは気にしていたようです。稽古も思ったほどできなかったと聞きました。照ノ富士の復活はかなり困難でしょうが、じっくり治すことです。
 せっかくの御嶽海の昇進に水を差してはいけません。今場所は前に出る相撲が多く安心して見ていられましたが、負けた2番を見るとまだ安心してはいられません。昇進した以上は上は横綱しかありません。次は横綱だと声を大にして応援したいところだが、今のところそこまでは期待はしていません。
 体力面や技能には高い評価はできても、問題は精神面です。私も現役時代はむらっけが多く、好不調の波が大きく安定した成績は残せませんでした。本人は「フランク」な大関になりたいと言っているが、大関の地位はそんなに甘くはない。今の大関や朝乃山を見れば分かるように、昇進した時はすぐにでも横綱と言われながらも、今では大関の番付も風前の灯である。
 まだおめでとうとも言わないうちに説教じみたことで申し訳ない。しかし、私の古巣でもある出羽海部屋から47年ぶりに大関が誕生したことは誠に喜ばしい限りである。
 名門・出羽海の大関らしく誇り高い大関になってもらいたい。郷土の大先輩、雷電はあまりにも強すぎて横綱になれなかった。その点、御嶽海にはそんな心配はない。横綱を目指して頑張ろう。今夜は私もお祝いに一杯やりたくなった。近くのホテルのバーにでも行って「マルガリータ」でも飲みますか。
 とにかくおめでとう。(元横綱)
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